相米慎二監督の作品が4Kリマスター版で蘇る 『お引越し』『夏の庭 The Friends』12月公開
相米慎二監督の『お引越し』『夏の庭 The Friends』が、4Kリマスター版として12月27日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開されることが決定した。 【写真】『夏の庭 The Friends』場面写真 『セーラー服と機関銃』『ションベン・ライダー』『台風クラブ』などで知られ、日本映画界を代表する名優・監督らが揃って彼への想いを熱く語るなど、圧倒的な存在感を放ち続ける相米監督。作品に関わった俳優・スタッフのみならず、没後20年以上経った今もなお、映画人たちへの影響は計り知れない。 そんな相米監督の命日である本日9月9日に、後期を代表する監督作が30年の時を経て、4Kリマスター化されることが発表された。 1993年、第46回カンヌ国際映画祭である視点部門に選出された『お引越し』は、両親の別居から家族の危機に揺れる小学6年生の少女の心を躍動感たっぷりに描いた作品。35ミリオリジナルネガフイルムから4K解像度によるスキャンを行い、デジタルリマスター作業を施したリマスター版は、2023年の第80回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(Venice Classics)に出品され、最優秀復元映画賞を受賞。その後フランスで劇場公開されるや、当初の数館から50館以上に公開拡大の快挙に。さらにはフランスを代表するル・モンド紙一面で取り上げられるなど、各メディアから「30年の時を経て、ついに姿を現した」「青春映画の偉大な作品」と絶賛の声が集まり、台湾やアメリカ、オランダ、スイスでも上映された。 同じく公開を迎える『夏の庭 The Friends』は4Kリマスター版として修復されると、今夏、大々的に相米慎二監督特集が組まれた香港映画祭〈夏編〉にてワールドプレミア上映を果たした。原作は、世界十数カ国で翻訳出版されている湯本香樹実の小説で、三國連太郎の圧倒的存在感と少年たちの瑞々しい演技により映画化した。ある老人と少年たちの交流から“死”と“生”を考えさせられていく、ひと夏の成長譚だ。 また、『お引越し』でデビューを飾った田畑智子、その父・ケンイチを演じ、相米監督とは『東京上空いらっしゃいませ』でもタッグを組んだ中井貴一、『夏の庭 The Friends』で少年たちの担任の先生を演じ、NHK連続テレビ小説『ええにょぼ』に続き映画初挑戦となった戸田、この度の公開作両作を含む多数の相米監督作品に出演している笑福亭鶴瓶より、公開決定に寄せてコメントが到着した。 【コメント】 ●田畑智子(『お引越し』レンコ役) 『お引越し』は私自身のデビュー作であり、思い入れしかない、宝物のような作品です。 小学生だった私は、まさか30年経ってもまだこの仕事をしているなんて思ってもいませんでした。 相米監督に出会って私の人生が変わった。あの夏はそのぐらいの出来事でした。 それが今、またスクリーンで観られる! みなさんがどういう感想を持ってくださるのか、すごく興味が湧きます。 改めて観る方も、初めての方も、現代だからこそ響くところがきっとあるし、相米監督のつくる世界をいろんな方に楽しんでもらいたいです。 ●中井貴一(『お引越し』 父・ケンイチ役) 相米監督との出会いは、人見知り合戦からスタート。お互い、人見知りで、『東京上空いらっしゃいませ』の顔合わせが進まず、トイレから帰って来た相米監督が、突然、「中井、ゴルフやる? ゴルフ行こう」と。 その一週間後、ゴルフをラウンドしながら、打ち合わせ、顔合わせとあいなった。そこからの、お付き合い。 『お引越し』は、一ヶ月、京都ロケ。しかも、お盆時期。インバウンドの盛んな今ほどではないが、実際の大文字山をバックに撮影などとは、車量、人の数からして正気の沙汰ではない。 それを、平然と実行するのが、相米組の凄さ。 まだまだ、話すエピソードの尽きぬ、思い出の映画である。 最も敬愛し、最高の友人でもあった相米慎二の凄さを、再び体感してほしい。 ●笑福亭鶴瓶(『お引越し』木目米先生/『夏の庭 The Friends』葬儀屋役) 相米監督には『東京上空いらっしゃいませ』からずっと出演させてもらったのですが、その時は別に何とも思わなかったですね。ただウマが合って、僕と相米監督と安田プロデューサーと中井貴一で“あほの会”というのを作って月に一回ご飯食べに行ったりしてましたね。 いま番組で色々な監督と出会う機会が多いのですが、“相米さんはどうやった”とずっと聞きはるんですよね。若い監督が相米慎二の事を神さんみたいに尊敬しててそんな監督の作品にずっと出してもうてた僕までもがなんか羨ましがられて...。改めてすごい人やったんやなと実感してます。 ただ人間的には無茶苦茶ですよ。それでも人に好かれていて不思議な人ですね。 あの偉大さを今ようやくわかったというか、ただの友達と思ってましたがすばらしい監督ですね。 ●戸田菜穂(『夏の庭 The Friends』近藤夏子先生役)】 私の映画デビュー作は、相米慎二監督の『夏の庭 The Friends』で、三國連太郎さん淡島千景さんの孫の役だったと話す時、とてもとても誇らしい気持ちになります。 「わあ、虹きれい」このセリフ、何度やってもオッケーがもらえず、「ダメ」「ダメ」「違う」と言われ続けました。 静まり返る現場で一人ぼっち、頼れるのは自分しかいない。これがプロの厳しさだと教わりました。本当に虹がきれいだと思ってセリフが言えるまで、延々と繰り返されたこの尊い経験がいつも私の根底にあります。 あの夏の神戸、小さな家、庭、コスモス。今はもう会えない相米監督。。。 あの少年たちはいくつになったのかなあ。 あの夏に行ける! もう一度映画館で! 試写室から出てきた相米監督の目には光るものがあり、それはとても優しい目でした。
リアルサウンド編集部