エントランスの前に女性用トイレは“鉄則” 70年代・東京の「大人の社交場」を作った伝説的存在・岡田大貳
■一歩先は、何をしているかわからない“大人の社交場”
パリでウエイターとして働いていた岡田だが、転機が訪れる。ある、お店との出会いが、岡田のその後の人生に、大きな影響を及ぼすことになる。 岡田:ある時、長くパリに住んでいる有名な絵描きさんの娘さんがいて、その方とお付き合いというか、ご飯食べたり……という関係で。ある時に会員制ディスコの「キャステル」に連れてってくれたんですよ。素晴らしい世界だなぁと。びっくりしたんですね。入ると、とにかくちっちゃいんです。アメリカと違って。ちょうど木の戸を開けて入ると、そうですね三畳のお広間、廊下があって、そこでチェックされるんですよ。小窓が開けられて。会員カードとか、会員証なんか、その時じゃなかったですからね、顔見られて。じろじろじろじろ見られて。OKになると入れてくれる。 岡田:日本は登記上の問題があって、(ディスコの踊り場は)大きさの何分の1って決められてるんです。だけど、そんなものはないので、要するに振り袖合うっていうか、ぶつかっちゃう。それをわざとやるんですね。ピストンを小さく小さくして、それで踊らせるんです。もう真っ暗ですよ。真っ暗で、誰がいるかわからない。向こうの側は何してるか全然わからない……。“大人の社交場”ですからね。
■エントランスの前に女性用のトイレを設けるのは“鉄則”
岡田はその後、パリでウエイターとしての下積みを経て、73年に帰国。アルバイトや知人の店の手伝いなどをしながら過ごしていたある日、六本木・飯倉の「キャンティ」で、川添象郎と出会う。 岡田:お話しすると、実は私の兄と川添象郎さんは慶応で同期か同学年でしたね。そんなこともあって川添さんは「大(岡田大貳)ちゃん、今どうしてるの?」という話になった。そして、「実は今度パリのキャステルが東京に出店することになった。君は、キャステル知ってる?」と聞かれて。私は「行ったことありますよ」と。 そうした縁もあり、六本木にオープンする「Castel Tokyo」のアシスタントとして手伝うことになった岡田。本場「キャステル」での薫陶を受けた岡田が、日本に初めて持ち込んだとされる文化がある。 エントランスの前に女性用のトイレを設ける、というものだ。 岡田:これは(パリの)キャステルさんに教わったんですけど、キャステルという店は大体が男性6割、女性4割の店で、ほとんどがカップル。そうすると女性はどこかで大体ご飯を食べてくる。それから来るケースが多いので、先に男性を行かせて、女性はお手洗いでお化粧を直して、もう一回飲み直すと。なので絶対的にお手洗いは入り口のすぐそばに作りなさいと、鉄則だと言われました。