ジョーカー三笘薫はなぜ機能しない? ブライトンが最下位に勝てなかった理由【分析コラム】
プレミアリーグ第12節、ブライトン対シェフィールド・ユナイテッドが現地時間12日に行われ、1-1のドローに終わった。この試合で三笘薫は後半開始から出場。 “ジョーカー“として起用されたが、彼が出場した45分間でゴールは生れないまま、相手に追いつかれて引き分けてしまった。なぜ、日本代表FWは流れを変える存在になれなかったのだろうか。(文:安洋一郎) 【動画】ブライトン対シェフィールド・ユナイテッド ハイライト
●ブライトンがプレミアリーグで6試合勝利なし ブライトンが“沼”を抜け出せずにいる。 3日前にアヤックスのホームでUEFAヨーロッパリーグ(EL)の一戦を戦ったこともあり、ロベルト・デ・ゼルビ監督はスタメン6人を入れ替えて今節シェフィールド・ユナイテッド戦に臨んだ。 今節の相手であるシェフィールド・ユナイテッドは、前節終了時点で最下位に沈んでおり、相手との実力差も影響したのか、指揮官は公式戦9試合連続でスタメン出場していた三笘薫をベンチスタートにすることを選択した。アヤックス戦では疲労の色が濃い中でもフル出場しており、ターンオーバーするには最適なタイミングだったと言える。 しかし、プレミアリーグで直近5試合勝ちなしと苦戦が続くブライトンは、最下位と苦しむ昇格組相手にも勝つことができなかった。 三笘は後半開始からピッチに立ったが、彼が出場した45分間でゴールは生れなかった。 奇しくも、ブライトンが前回プレミアリーグで勝利したのは、三笘が今節と同じように後半開始から出場した第6節ボーンマス戦だった。この試合で日本代表FWは投入から1分後に勝ち越しゴールを決めるなど、2得点を挙げて勝利の立役者となっている。 今節も第6節ボーンマス戦も、三笘を途中出場から流れを変える“ジョーカー”として起用したことは一緒だったが、なぜ正反対の結果となってしまったのだろうか。 ●三笘がジョーカーになれなかった理由 三笘は10月5日に行われたELマルセイユ戦を最後に公式戦6試合連続で得点に絡めておらず、過密日程の余波を受けてコンディションを落としている。これも今節輝けなかった要因の一つだが、それよりも大きなウェイトを占めているのが周りの選手たちの相次ぐ怪我だ。 特に痛恨なのが、左SBの不動のレギュラーであるペルビス・エストゥピニャンの不在だ。3日前のアヤックス戦で復帰を果たした同選手だったが、再び怪我を負って離脱してしまった。 ジョーカーとして機能したボーンマス戦は、エストゥピニャンが大外を張り、三笘はハーフスペースまで絞ってプレーをしたことで、ゴールに近い位置でプレーすることができていた。しかし、このエクアドル代表DFが離脱をしてからは三笘以外に大外で仕掛けられる選手がいなくなってしまい、エヴァートン戦ではジェームズ・ミルナーを外に張らせたが、これが全く機能しなかった。 今節シェフィールド・ユナイテッド戦はエストゥピニャンやルイス・ダンク、ソリー・マーチ、タリク・ランプティ、ジェームズ・ミルナーら最終ラインでプレーする多くの選手が不在で、保持時は[3-2-5]の可変システムで戦っていた。 三笘は実質的な左WBとなり、大外のポジションを取り続けたが、3バックの戦術が機能した第10節フラム戦とは人の配置が違った。フラム戦ではアダム・ララーナとパスカル・グロスというライン間でパスを受けるのが上手い2選手がツーシャドーのポジションでプレーしていたが、今節に関して前者は三笘と入れ替わる形で前半のみの出場、後者は右SBとして出場し、保持時は偽SBとしてボランチの立ち位置を取ることが多かった。 前線のライン間で能力を発揮できる彼らがいれば話は変わってくるのだが、前半のうちにララーナがベンチに下がったことで、シェフィールド・ユナイテッド戦の後半は中央からのチャンスメイクをほとんどすることができなかった。そのため相手からすれば、サイド攻撃以外に怖いものはなく、三笘に対してダブルチームで対応するなど、WGへのマークを徹底することで、ブライトンの攻撃をシャットアウトした。 ●最下位に勝てなかった最大の要因 それでも試合は“ある出来事”が起こるまで完全にブライトンペースだった。 1-0で迎えた69分に、マフムド・ダフードがベン・オズボーンの足首を踏んづけてしまい、一発退場となったことが試合の流れを変えてしまった。 怪我でメンバー外となった主将のダンクを筆頭に経験豊富なミルナーやララーナもピッチにいなかったこの状況で、リーダーシップを発揮できるブライトンの選手はピッチ上に存在しなかった。 69分の退場劇で完全に気持ちが切れてしまったホームチームは、残りの21分+アディショナルタイムの大半の時間でシェフィールド・ユナイテッドにボールを保持され、試合終了のホイッスルが鳴るまで1本もシュートを放つことができなかった。 1人少なくなってから守備に走らされ続けたブライトンは攻守に足が止まる場面が散見され、74分の失点シーンの場面では三笘の対応が1、2歩遅れた隙を突かれてオウンゴールを献上してしまった。 この場面だけ見ると、失点の責任は日本代表FWにあるが、ブライトンは開幕11試合で無失点に抑えた試合が一つもなく、勝てなかった要因はこの失点よりも、自分たちが主導権を握っていた時間帯に追加点を奪えなかったことの方が割合としては大きい。 現在8人の負傷者がいるブライトンが再び上昇気流に乗るためには怪我人の復帰が欠かせない。今週、来週のインターナショナルマッチウィークに何選手かが復帰できる予定だ。 ここで主力が帰ってくればチームとしては大きなプラスに働くが、仮に復帰できないとなると年明けまでの超過密日程でさらに順位を落としてしまうかもしれない。ブライトンが正念場を迎えている。 【了】
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