FRB年内利下げ、従来の3回から1回に 金利は7会合連続据え置き
米連邦準備制度理事会(FRB)が12日、政策金利(5・25~5・5%)を7会合連続で据え置くことを決め、年内の利下げ回数を「1回のみ」とする見通しを示した。従来は「3回」としていたが、物価上昇(インフレ)の長期化が想定を上回り、早期の利下げシナリオが狂った。「強いドル」が続くことで、外国為替市場では円安・ドル高の傾向が続きそうだ。 【図でわかる】世界の時価総額トップ10 消えた日本企業 「インフレ率が持続的に2%へ向かっているとの確信を強めるには、さらに良いデータを見る必要がある」。パウエル議長は12日の記者会見で、利下げに踏み切るにはインフレ鈍化を示す確かな証拠が必要との認識を示した。 FRBが同日示した最新の経済見通しでは、年末の政策金利は5・1%。現在の政策金利から利下げに転じるとすれば、0・25%の利下げは年内1回だけとなる計算だ。3月時点では、年末の政策金利は4・6%で年内3回の利下げが見込まれていただけに、利下げペースが大きく鈍る公算が大きくなった。 FRBの残る年内会合は7、9、11、12月の4回。市場では、3月時点で「6月にも利下げが始まる」との期待が強まっていたが、現時点では「最速で9月」との見方が支配的だ。「年内の利下げは不可能」との悲観論も浮上している。 FRBが初めて利下げシナリオを示したのは2023年12月の会合。01年以来22年ぶりの高水準となっていた政策金利の引き上げを「打ち止め」にし、24年中に3回の利下げを示唆する内容だった。ダウ工業株30種平均が史上最高値の更新を繰り返すなど市場は好感したが、それから半年過ぎても利下げ開始の見通しはたっていない。 背景にあるのは、長期化するインフレだ。12日午前に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3・3%上昇。2カ月連続で前月を下回ったものの、FRBの目指す2%にはまだ距離がある。 FRBが利下げシナリオを示した当時、多くのアナリストは強力な利上げのあおりで米経済は24年に減速すると見ていた。しかし、実際は堅調な個人消費がけん引し、米経済は1~3月期まで7四半期連続でプラス成長を記録するなど絶好調。インフレ率はピークの22年6月(9・1%)に比べ低下しているが、目標の2%台まであと一歩、足踏みが続く。 FRBは3、6、9、12月に示す経済見通しで、金利を上げ下げする回数を示唆している。3月会合では「24年中に3回利下げ」のシナリオを維持したが、1年の折り返し地点に至っても物価目標の達成が見通せない現実を踏まえ、シナリオ変更を余儀なくされた。 FRBの利下げが遅れれば、基軸通貨ドルの高金利が続くことになる。欧州中央銀行(ECB)やカナダ銀行など主要中銀はインフレ率低下を受けて既に利下げに転じており、外国為替市場は他通貨に対してドルが買われる「ドル独歩高」の展開となりそうだ。【ワシントン大久保渉】