日テレ、原作者急死の「セクシー田中さん」調査結果公表 「必ず漫画に忠実に」の認識に齟齬
日本テレビは31日、昨年10月期に放送された連続ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが1月に急死した件を受けた社内特別調査チームの調査報告書を公表。結果公表に先立ってラジオ・テレビ記者会向けに説明会が開かれた。 芦原さんは生前、制作側とドラマ化をめぐって意見がずれ、自ら9、10話の脚本を担当することになった経緯などをブログで公表(のちに削除)。1月29日に死亡しているのが見つかった。 91ページにわたる報告書では、日本テレビ関係者、脚本家を含むドラマ制作関係者、小学館の関係者、社外の有識者ら計39名にヒアリング。ドラマ化の企画が立ち上がった23年2月から、ドラマの制作準備、制作、放送終了後にいたるまで詳しく調査がすすめられた。 調査・検証の結果、日本テレビ側と小学館の間に原作コミックの実写化について齟齬(そご)があったことが指摘。芦原さんがブログで記した「必ず漫画に忠実に」という実写化の条件について、日テレ側が文書や口頭で指摘された事実は確認できなかったとしているのに対し、小学館側は「漫画を原作としてドラマ化する以上、『自由にやって』と言われない限り原作漫画に忠実にドラマ化するのは当然」という認識があったことが明らかにされた。 また原作者側からの意向に沿わない形のシーンの問い合わせについて、当該シーンは未撮影であったにもかかわらず、ドラマ制作関係者が撮影済みであると事実と異なる回答をしたことがあったという。結果的に当該シーンは10月にリテイク(撮り直し)されたが、原作者からの信頼感が損なわれる一因になったと指摘された。 また芦原さんはドラマオリジナル部分になる第9・10話の脚本家交代を強く要請。脚本家の「監修」「脚本協力」「協力」等のクレジットの提案も認められず、最終話のオールクレジットとして、原作者と離す形で「脚本家(1~8話)」と表示されることになった。この判断を脚本家に納得させることができなかったことが、脚本家のSNS投稿につながったと指摘された。 調査チームは「最終的には、放送されたドラマは本作原作者の意図をすべて取り入れたものとなったと日本テレビも小学館も認識している」と結果を公表。今後の提言として〈1〉原作者や脚本家等との信頼関係を構築するための方策〈2〉ドラマ制作におけるトラブル回避のための方策〈3〉制作/組織体制における諸課題の解決策〈4〉相談窓口の活用などが提示された。 提言内容の要旨は以下の通り。 〈1〉原作者や脚本家等との信頼関係を構築するための方策 ・原作の改変について相互理解を図る ・ドラマ化にあたっての思いの事前説明を記した「相談書」を共有 ・原作者と制作担当者との直接面談を要請 ・脚本家との向き合い ・撮影前に最終話までの構成案を用意 〈2〉ドラマ制作におけるトラブル回避のための方策 ・契約書の早期締結 ・SNSの利用における留意点の共有 〈3〉制作/組織体制における諸課題の解決策 ・プロデューサーの業務量・人数についての見直し ・コミュニケーションの重要性の再認識 ・ドラマ班の人材育成とフォロー体制の強化 ・上長によるチェック体制の構築 〈4〉相談窓口の活用 ・「日テレホットライン」の周知
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