日米、授賞式当日に核協議 廃絶と抑止のジレンマ ノーベル平和賞
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞は、戦後の日本政府が抱える「核廃絶」という理想と、「核抑止」に頼る現実のジレンマを改めて浮き彫りにした。 【ひと目でわかる】ノーベル賞の賞金額推移 唯一の戦争被爆国にもかかわらず、厳しい安全保障環境の下では同盟国・米国の「核の傘」に依存せざるを得ない。日米両政府は、米国の核戦力などで日本を守る拡大抑止の協議を、授賞式当日の10日から開いた。 「核のない世界と拡大抑止の中で、いかにして日本の独立と平和を守るか。議論させてほしい」。石破茂首相は10日の衆院予算委員会で、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を求めた立憲民主党議員の質問に明言を避けた。 1945年8月の広島、長崎への原爆投下などを受け、日本国民には核兵器廃絶を求める強い思いがある。67年に当時の佐藤栄作首相が提唱した「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする「非核三原則」は日本の「国是」となった。 米英仏中ロの5大国に核兵器保有を認める核拡散防止条約(NPT)体制の下、日本は核軍縮を目指す。石破首相は予算委で「NPT体制でいかに核軍縮するか、わが国は最大の努力をしてきた」と訴えた。 一方で日本は拡大抑止を重視している。日米の高官による協議は10~12日の日程で日本で開催。林芳正官房長官は記者会見で「同盟の戦略・能力に関する相互理解を向上させ、抑止力を強化するための方策について意見交換する。こうした議論を通じ、米国の拡大抑止の信頼性を維持・強化していく」と淡々と語った。 政府が2022年12月に策定した国家安保戦略は「拡大抑止の提供を含む日米同盟は安保政策の基軸」と明記。今年7月には拡大抑止に関する日米閣僚会合が初めて開かれた。 ロシア、中国に加え、核開発を進める北朝鮮が日本を取り囲む。ウクライナ侵攻を続けるロシアは核使用を繰り返し示唆し、中国は核戦力を増強している。外務省幹部は「日本の安保政策は核の傘による抑止で成り立っている」と指摘した。