《『古畑任三郎』では今までにない自分を》俳優・田村正和さんの知られざる晩年「もうやりきった…」77才で他界した2人の兄を語る弟・田村亮
代表作『古畑任三郎』シリーズが6月にフジテレビで再放送されるなど、亡くなって3年の月日が流れても人気が衰えない俳優・田村正和さん(享年77)。“憂愁の貴公子”と呼ばれた兄を持つ俳優の田村亮さん(78)は、正和さんが亡くなった年齢を超えた今も現役で活動を続けている。最近の活動や暮らしぶり、これまでの半生、長兄・高廣さん(享年77)も含めた“田村3兄弟”や、大スターの父・阪東妻三郎さん(享年51)とのエピソードなどについて聞いた。【全3回の第1回】 【写真】若き日の田村正和、三兄弟でのゆったりとした家族写真
* * * 先日再放送された正ちゃん、いや正和兄貴のドラマ『古畑任三郎』は拝見しましたよ。高廣兄貴の作品も放送されたら見ますし、2人が存命中も見ていました。僕は録画して見るのは好きじゃないので、その日、新聞を広げて「あ、今日放送されるんだな」と思って、家にいたら見るぐらいですけどね。 でも、お互いの作品について、兄弟で語り合ったことはないんです。だから、『古畑任三郎』も正和兄貴が「どう演じようかな」「それまでにない自分を出そう」と一生懸命考えて演じているのを、テレビを見ながら感じていました。とくに、ラスト5分ぐらいの犯人のトリックを解き明かすシーンは見所ですよね。三谷幸喜さんの作品だけあって、正和兄貴の力が入っているのがわかりました。兄貴は亡くなった後も、こうして多くの人に作品を楽しんでもらえるのだから幸せです。 考えてみれば、高廣兄貴も正和兄貴も77歳で亡くなったでしょ。だから、僕も77歳で何かあるんじゃないかと、ここ1年はヒヤヒヤしていました。この5月で78歳になり無事に77歳を超えたので、「あぁ、生き延びた」と少しホッとしていたところです。正和兄貴は「もうやりきった」と晩年は表に出ませんでしたが、僕はまだまだ、体力さえあればできるんじゃないかな、と思っていますね。
田村家の「墓」
僕は6月23日から放送されているNHKのBS時代劇『大岡越前7』で、松平左近将監(まつだいら・さこんのしょうげん)という幕府の老中首座を演じています。 舞台は10月に京都の南座で『太夫(こったい)さん』という、島原遊郭を舞台にした藤山直美さんの錦秋喜劇特別公演に出ます。今回は2回目。お茶屋の主の役です。これも京都、『大岡越前7』も2~5月に京都で撮影しました。なんだかんだで、年に数回は京都へ行きます。僕は生まれて小学校1年生の途中まで京都で育ちましたから、“地元”という感覚です。 京都の二尊院には田村家のお墓もありますから、京都へ行った折にはお墓参りもしています。オヤジはもともと江戸っ子で、お墓は日本橋浜町にあったのですが、仕事で東京と京都を行ったり来たりして京都が長くなり、昭和18年に、両親を京都に呼び寄せて墓も移したんです。 だから、墓には両親や高廣兄貴だけでなく、先祖代々の小さな骨壺がたくさんおさめられています。もう僕の入る場所はないんじゃないか、というくらい(笑)。そのせいか、正和兄貴は生前、横浜に墓所を定めました。僕は海に散骨してもらうのがいいんじゃないか、と思ったりしています。海ならハワイからでも欧州からでも、海を見たときに手を合わせてもらえますから。 春には映画『宮古島物語ふたたヴィラ かんかかりゃの願い』の撮影で、沖縄の宮古島へ行きました。去年公開された映画『宮古島物語ふたたヴィラ』の第3弾です。あちこち行って忙しい? いや、暇しています(笑)。家でジッとしていられないタチなので、撮影であちこち出かけられるのはいいですよ。