子どもの国語力を左右する「遺伝より大切なもの」 苦手意識は解消できる
国語力は「遺伝」より「環境」
この章の最後にもうひとつ。 「お母さんもずっと国語が苦手だったから、あなたも国語が苦手なのね」そう思われたこと、言ってしまったことはありませんか。 我が子が過去の自分と同じような間違いをしていたり、似たようなつまずきをしているところを目にしたりすると、ついそう思ってしまいます。 たしかに、人間が持っているさまざまな能力や資質は遺伝することがあります。 「お母さんは文系だから」「お父さんは理系だから」という言葉もよく耳にします。 でも、ご安心ください。国語力はほとんど遺伝しません。 双子を比較して環境と遺伝を研究する行動遺伝学で有名な慶應義塾大学の安藤寿康教授によると、言語性知能(言葉を使った思考力や表現力国語力)に関しては、遺伝の影響がわずか15%程度。それに対して、家庭環境の影響は60%弱と非常に大きくなっていると説明されています。 また、学校などの環境よりも家庭環境のほうがより影響力があるというデータも紹介されています。 ※安藤寿康『遺伝マインド --遺伝子が織り成す行動と文化』有斐閣Insight 数的処理の能力や音楽的センスの90%が遺伝によって決まるというデータと比べると、いかに言語(言葉)の力が環境によって左右されているかがわかります。 逆に言えば、国語力は環境によって向上する可能性が十分にあるということです。 遺伝ではなく、環境。 言語(言葉)のを整えていけば、「国語が苦手」の遺伝を乗り越えることができるのです。 ただ、「はじめに」でも書いたように、「家庭で育む国語力がすべてを決める」と背負い込む必要はありません。 まずは、肩の力を抜いて国語力についてなんとなく知っておくこと。 そして、本書の中に記されているような取り組み方が、ひとつの選択肢としてあることをわかっていただくだけで、家庭環境づくりの第一歩はクリアです。
中本順也