「今年は申告漏れ、相次ぐ恐れ」税理士が指摘 東芝などTOBによる上場廃止が影響
間もなく、確定申告の期限となります。昨年、大手企業の東芝などがTOB(株式公開買い付け)による上場廃止となりました。こうした上場企業を巡るTOBの影響で、「今年は申告漏れが相次ぐケースが想定されます」と渋谷税理士法人(東京都渋谷区)の山下健人税理士は指摘しています。 【動画】「教科書」が存在しない事業承継
◆自動で源泉徴収されないケースも
TOBで上場廃止となった銘柄を保有していた場合、発行会社による買い取りや株式交換が行われます。買い取りの場合、証券会社を通さない取引となるため、特定口座内の損益は計算されません。 このため、長年、自動的に源泉徴収が行われる特定口座(源泉徴収あり)で上場株を保有していた人の中には、税金の精算が自動的に済まされていると勘違いし、申告漏れに至るケースがあるといいます。 国税庁のデータによると、2022年のTOBは77件あり、そのうち上場廃止後に株式買い取りが行われた件数は、44件でした。 そのとき、4億7,495万円の申告漏れ所得金額が見られ、追徴税額が7,258万円にも上りました(※サンプル調査)。 2023年もTOB件数は高水準で推移し、大手企業の上場廃止が相次いだことから、同様の申告漏れが発生する恐れがあります。
◆確定申告をした方がお得になる3つのケース
上場株式を保有している場合、確定申告でメリットを受けられる3つのケースがあります。 ①上場株式等で譲渡損が出た場合 上場株式等の譲渡損が出た際、確定申告を行うと、譲渡損の金額を該当年分の上場株式配当所得等と相殺できます。 損益通算しても損失が残る場合、その損失額を翌年から3年間、上場株式の譲渡利益および上場株式の配当と相殺(繰越控除)することも可能です。 繰越控除は確定申告をしないと適用されません。 ②複数の特定口座で利益と損失がある場合 特定口座(源泉徴収あり)が複数ある場合、申告するかどうかは口座ごとに選択が可能です。 譲渡損がどれかの口座で発生し、他の口座に譲渡益が発生しても、自動的に損益通算は行われません。 この場合は確定申告をすることにより、利益と損失を相殺し、還付を受けられます。 ③配当控除を受ける場合 配当所得は、一定の場合には申告しないこともでき、総合課税と申告分離課税のどちらかで申告することもできます。 総合課税として確定申告を行うと、税率はほかの所得と合算した金額で決まり、配当控除を受けられ、節税できる場合があります。 節税できるかどうかは、課税所得額によって変わります。 今年の確定申告を巡っては、自民党の裏金問題を受けて「ボイコット」を叫ぶ動きもありますが、無駄な追徴税を取られないようにしたいものです。 確定申告の期限は、2024年3月15日(金)までとなっています。
取材・文/野田知江