「事実無根の噂を平気で流す人」が許容される理由 他人の不祥事が面白おかしく語られることに快感
とりわけきつく当たられているのが、既婚あるいは男性と交際中の女性らしい。そういう女性からの経費請求には、必ずといっていいほど難癖をつけるため、自腹を切って必要な備品を購入している女性社員もいるほどだとか。そのうえ、「腰掛け気分で会社に来てもらったら困るのよね」などと嫌みを言う。 事実無根の噂を流された女性も、経費請求の際に不快な思いをしたことが再三あった。また、彼女が同期の男性と交際していたことは、社内では割と知られていたらしい。同期との交際に対して、お局社員が羨望を抱いた可能性も十分考えられる。羨望とは、他人の幸福が我慢できない怒りにほかならないので、この幸福をぶち壊してやりたいと思って、とんでもない噂を流したのかもしれない。
■「イネイブラー(enabler)」が多い組織の怖さ 私が驚くのは、お局社員が流した噂を社内の多くの人々が信じただけでなく、さらに拡散したことだ。その結果、噂を流された女性の交際相手までがうのみにして、別れを告げた。お局社員の日頃の行状を聞く限り、こんな人の言うことをなぜ信じるのかと首を傾げたくなるが、それなりの理由があるようだ。 まず、お局社員は男性社員には非常に優しいという。若い女性社員に対する容赦ない対応が嘘のように、男性社員、とくに営業職の男性からの経費請求には甘く、とても親切で、面倒見もいい。だから、お局社員を姉のように慕っている男性もいて、噂を流された女性の元交際相手もその1人だった。
しかも、お局社員は管理職には平身低頭で、ゴマすりも上手らしい。この会社では、管理職はほとんど男性で、若い頃からお局社員に優しい対応をされてきたので、彼女を高く買っている管理職も少なくないそうだ。独身のため自分で食べていかなければならないお局社員なりの保身術は功を奏しているわけで、とくに営業職の男性に甘いのも、営業が稼ぎ頭で花形という合理的な理由によるのだろう。 第一、お局社員は勤続年数が長く、仕事もできるため、どうしても周囲から頼りにされる。それほど大きな会社ではなく、離職者も後を絶たないので、経理に一番詳しいのがお局社員という状況では、結局わからないことがあるたびに彼女に尋ねるしかない。