「北陸応援割」の経済効果は605億円:現段階では給付金による旅行事業者支援が妥当
「北陸応援割」の対象4県の旅行消費は全国の4.6%
岸田首相は25日に、能登半島地震で大きな打撃を受けている旅行事業者を支援するため、被災関連県の旅行に政府が補助をする「北陸応援割」を実施する考えを明らかにした。26日には観光庁が、その枠組みの詳細を示した。 対象となるのは新潟、富山、石川、福井の4県であり、同地域への旅行商品を半額で購入できるようにする。宿泊の場合は1人1泊につき2万円を上限とし、新幹線や高速バスなど交通費と宿泊がセットになったパックツアーも割引の対象となる。期間は3月から4月下旬の大型連休前までを想定しているという。予算額は94億4,000万円である。 この「北陸応援割」がどの程度の経済効果を生むのかについて、まずは考えてみたい。観光庁が公表している旅行・観光消費動向調査によると、2023年1-3月期の日本人国内旅行消費額は、4兆2,554億円、4-6月期は5兆6,138億円だった。両者の合計は9兆8,692億円となる。「北陸応援割」が3月から4月末までの2か月間行われるとすれば、対象時期の国内消費額の昨年の実績額は、3兆2,897億円(9兆8,692億円÷3)となる。 他方、観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2022年の都道府県別延べ宿泊者数は、「北陸応援割」の対象となる4県で2,072万6,560人と、全国の4億5,045万8,460人の4.6%に相当する。対象4県の対象期間(2か月)の国内旅行消費額が全国の4.6%だとすれば、旅行消費額は1,513.3億円(3兆2,897億円×4.6%)となる。
「北陸応援割」の経済効果(旅行消費額増加額)は605.3億円
ところで支援の対象となる旅行関連消費額の中心は、宿泊代、交通費といったサービス消費である。内閣府の分析によると、サービス消費の価格弾性値は-0.8である。これは、価格が1%低下すると実質サービス消費は0.8%増加する傾向にある、ということを意味している(コラム「東京除外で減少するGo Toトラベルの消費押し上げ効果は1.5兆円程度か」、2020年7月17日)。 「北陸応援割」では旅行費用が半分になる、つまり50%の値下げが実施されることに等しくなるため(上限を超える支出部分は考慮しない)、それは支援の対象となる旅行関連消費を40%増加させる計算となる(支援部分も含む)。その場合、「北陸応援割」の効果によって、対象4県の対象期間の国内旅行消費額は、1,513.3億円の40%、つまり605.3億円追加で増える計算となる。 実際に同程度の旅行消費額の増加が生じる場合、補助金に使われる政府予算の94億4,000万円は十分ではなく、予算の上積みが必要になるだろう。