粘り強く、泥臭く、堅実に… センバツ 九州から選出の4校
3月18日に開幕する第96回選抜高校野球大会の出場32校が26日、決まった。九州からは初出場の熊本国府など4校が挑む。今年は選抜高校野球大会の創設100年、また熱戦の舞台となる阪神甲子園球場が開場して100年のメモリアルイヤー。選手たちは飛躍を誓った。 【写真特集】センバツ出場の知らせを受け喜ぶ選手たち ◇東海大福岡「今日はスタートライン」 2017年以来3度目の出場となる東海大福岡。ネット中継を教室で見ていたユニホーム姿の選手らは、互いに笑顔で抱き合って喜びをかみしめた。 23年秋の福岡大会と九州地区大会で公式戦計10試合を戦い、エースの佐藤翔斗投手(2年)は速球とキレのある変化球を武器に6試合で完投した。チーム打率は3割5分6厘。勝負強い「全員野球」で強豪を相手に逆転劇を繰り返し、九州地区大会で4強入りした。 21年に就任した中村謙三監督(37)は「選ばれてホッとすると同時に身が引き締まる思い。甲子園では、はつらつと戦う姿を見せたい」と話した。目標は前回の8強入りを超える優勝。井上和翔主将(2年)は「今日はスタートライン。大勢の観客がいる甲子園の舞台で自信を持って自分たちのプレーができるよう、がんばりたい」と意気込んだ。【長岡健太郎】 ◇熊本国府、天国の恩師へ初出場報告 天国の森さんも喜んでいるはず――。春夏通じて初の甲子園を決めた熊本国府の選手たちは、ガッツポーズして喜ぶとともに、創部時の野球部長で2023年8月に亡くなった森宏さん(享年84)に思いをはせた。 昨秋の熊本大会前、選手から「森さんのために頑張ろう」との声が自然に上がった。森さんは06年の創部時から部長として、12年以降は相談役として選手たちに声をかけ続け、誰よりも甲子園出場を願っていた。 熊本大会から九州地区大会の決勝まで計9試合、ピンチの場面では、選手たちが森さんを思って天を見上げた。野田希主将(2年)は「みんな一呼吸置いて冷静にプレーできていた」と振り返る。 就任3年目の山田祐揮監督(30)が「メンバー外の選手はメンバーのために、メンバーはメンバー外の選手のために」と諭し続けたチーム作りも結実。打線に派手さはないが、昨秋の公式戦で試合後半から終盤での逆転勝利が5試合に上るなど、粘り強さが光る。 甲子園はベスト4が目標。捕手の寺尾真洸選手(2年)は「エラーなく堅実な野球をしたい。国府の強さは逆転できるところ。応援の力を借りて、控えの選手のためにも国府の野球をしたい」と大舞台を見据えた。【野呂賢治】 ◇明豊・木村留偉選手「練習量は負けない」 明豊は準優勝した2021年以来3大会ぶりの出場となる。23年秋の九州地区大会で1番・中堅手の木村留偉選手(2年)は「うれしい。出場できる実感が湧いた」とほっとした表情を見せた。 同大会では打率、出塁率とも4割超え。4試合中3試合で初回に出塁するなど安定した力を発揮した。 新チーム始動時にはベンチにも入れなかったが、プレーの反省点をスマートフォンに記録してこまめに振り返った。下校が午後9時を過ぎるまで自主練習に打ち込み、打撃面での成長を買われ、秋の大分大会からレギュラーに定着した。 はい上がってきたからこそ「器用な天才肌ではない。練習しないと(ライバルに)抜かれる」と危機感も強い。センバツに向け、「『明豊の1番はこいつ』と思われたい。ライバルは多いが、練習量では負けない」と気を引き締めた。【神山恵】 ◇神村学園「昨夏の4強を良い財産に」 2015年以来9年ぶり6回目の出場が決まると、ネット中継を見守った神村学園の選手たちは「ヨッシャー」と喜びの声を上げた。レギュラー全員が23年夏に4強入りした甲子園の舞台を経験しており、続く大舞台に気持ちは高ぶる。 23年秋の鹿児島大会は、5試合を計56安打52得点の猛打で圧倒して優勝。九州地区大会でも1回戦と準々決勝で計19得点を奪った。3~5番に加え6~8番の“第2のクリーンアップ”も強力で、どの打順からでも点を取ることができる。 神村学園では女子駅伝部が23年末の全国高校駅伝で優勝し、野球部員は刺激を受けた。センバツでは初出場の05年に準優勝した。川下晃汰主将(2年)は「昨夏の4強を良い財産にして、春に存分に力を発揮したい。泥くさい野球を一戦一戦重ねた先に頂点が見えてくる」と「野球でもV」を目指す。【梅山崇】