『ミッション・インポッシブル』トム・クルーズのヤバすぎアクション3選 ぶっとび撮影裏話も
『ローグ・ネイション』飛び立つ軍用機にしがみついて侵入せよ!
トムが高所恐怖症でないことは前作でも証明されたが、シリーズ第5弾『ローグ・ネイション』(2015)では、幕開け早々、飛び立つ軍用機エアバスA400Mにイーサンが生身で飛び移り、機内に侵入を試みる。機体にしがみつくトムが強風に晒され、端正な顔やいつも完璧なヘアが乱れる。開始早々繰り広げられるあり得ないスタントに、観ているこちらもアドレナリンが大爆発するが、「デジタルのトムもフェイクの飛行機もなし。彼は本当にエアバスに括り付けられた」と撮影監督のロバート・エルスウィットが証言するように、トムはここでも、CGもスタントダブルも使わずに自らスタントに挑んだ。 撮影は、エアバス社のフライトテストチームの協力のもと、実際にイギリスにあるウィッタリングの英空軍基地で行われた。100ノット以上の速さで飛び立つA400Mにしがみついたまま、トムは最高で1000フィート(約304m)の上空に6~8分も滞在。機体のドアと機内の床面にワイヤで固定され、すさまじい風を受ける中で演技をするため、目を保護する特別なコンタクトレンズを着用。何かが当たれば悲劇は免れないため、滑走路の掃除をぬかりなく行い、小石一つない状態に。また天気のコンディションも注視され、鳥がいないことも確認された。エルスウィットはこの撮影を振り返り「本当にクレイジーだった」と素直な感想を隠さない。
『デッドレコニングPART1』崖からバイクで飛び降りろ!
そして第7弾『デッドレコニングPART1』でトムはついに、ハーネスも身に付けず、絶壁の崖からバイクに乗ったまま華麗にダイブし、パラシュートで降り立つ。もはやここまでくると、観ているこちらは危険レベルに強弱の差などつけることができないが、これぞトムの「俳優人生で最も危険なスタント」だという(更新される可能性大)。 このシーンのためスタッフは、英オクスフォードシャーの採石場にジャンプ台と着地点を備えたモトクロスバイクのコースを設置。トムは午前中にパラシュートジャンプ、午後はモトクロストレーニングと傾斜台からのジャンプという訓練の日々を数ヵ月にわたって過ごした。実際の撮影のためにノルウェーの断崖に作られた傾斜台は、長さ203m、高さ17.5mに対し、幅は3m。撮影用のドローンとタイミングを合わせるため、決められた速度で走り切らなければいけないが、視線を手元に落とすと、たった3m幅のコースからはみ出してしまう。そこで彼はスピードを体感で判断できるようになるまで、練習を重ねたそうだ。 プロモーション中トムはこの撮影を振り返り、自身が深刻なケガを追った場合にそれまで撮ったものが無駄になることを避けるため、初日にこのシーンの撮影を行ったと、嬉々として明かしている。また、2022年にカンヌで開催されたマスタークラスで、自らスタントを行うことにこだわる理由について聞かれたトムは、「ジーンケリーに、なぜ自分でダンスをするのかと聞いた人はいないですよね」と答えたそうだ。トムにとって生身で崖から飛び降りることは、『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』で知られるミュージカルの大スターがダンスをするのと同じこと……我々と感覚が違うことだけは確かなようだ。(文:寺井多恵)