苦手な人とどう付き合う?上司、先輩、同僚、顧客…相手別・うまく接する方法
職場や取引先に苦手な人がいるけれど、仕事だから避けたり逃げたりするわけにはいかない…と悩むビジネスパーソンは少なくありません。このように、「苦手だけれど、かかわらざるを得ない相手」とは、どのように付き合えばいいのでしょうか?これまでに1万人超のメンタルを救ったという「金髪アフロと赤メガネ」がトレードマークの精神科医&メンタル産業医・井上智介先生に、ストレスを軽減する上手な付き合い方について教えていただきました。
苦手な人とうまく付き合うための「基本行動」
大前提として、「苦手な人との関係性を良くしようとは思わない」ことが重要です。 仕事をうまく進めるには、苦手な人であっても関係性を良くしないといけない…などと考える人が多いと思いますが、苦手な人と信頼関係を築くのは難易度が高いでしょう。 信頼関係とは、自分がまず相手を信頼することで成り立つ関係性です。しかし「苦手な人を信頼しろ」というのが、そもそも無理な話。たとえ頑張って信頼しようと努めても、心がついていかず思うようにいかなかったり、相手に思いが伝わらず無力感に苦しんだりして、余計にストレスになります。 苦手な人と接するときに大事にしてほしいのは、「自分が傷つかないようにする」ことと、「ストレスを抱え込みすぎない」こと。そのためには、苦手な相手と適度な距離を取ることが重要です。 距離を取る方法としては「物理的な距離を取る」方法と「精神的な距離を取る」方法の2つがあります。具体的な方法を、以下にご紹介します。 ◆物理的な距離を取る方法 苦手な人とは物理的な距離を取り、できるだけ視界に入らないようにすることが大切。リモートワークや在宅勤務などをうまく活用して、直接顔を合わせる機会を極力減らしましょう。毎日は難しくても、週1回だけでも顔を合わせない日を作れたら、それだけでも心がかなり楽になると思います。 苦手な人の顔が見える状況だと、それだけで心が乱れ、仕事に集中できなくなる人も多いようです。半休制度やフレックスタイム制などもうまく活用しながら、少しでも同じ空間にいる時間を減らすといいでしょう。 ◆精神的な距離を取る方法 苦手な相手と業務で日常的にかかわらなければいけない場合、物理的な距離を取るのは限界があると思います。精神的な距離の取り方も、いくつか覚えておきましょう。 メールやチャットでのやり取りに切り替える 同じ環境で働いていても、対面でのコミュニケーションを減らせば心を乱される機会も減ります。たとえば連絡事項はすべてメールやビジネスチャットで送るなどすれば、自分のペースを乱されず精神的にも安定します。相手にも、仕事の依頼や連絡は口頭ではなく「文字に残して忘れないようにしたいので、メールかビジネスチャットで送ってほしい」などとお願いするといいでしょう。 直接コミュニケーションの機会を極力減らす 苦手な人とのコミュニケーションを、業務上必要なものだけに限定することも大切です。もし仕事以外の雑談を振られたら、最低限のリアクションにとどめましょう。無理に雑談に乗って、話を広げる必要はありません。 その結果、相手に「あいつはあまり話に乗ってこないから、雑談を振るのはやめよう」と思ってもらえれば幸運なことで、向こうから必要以上に距離を詰めてこなくなります。 周りを巻き込み1対1のやり取りを減らす 苦手な相手との1対1のやりとりを減らすことは大切。誰かを巻き込めば、1対1に比べて相手との関係性の濃度が薄まり、精神的な距離も保てます。 たとえば苦手な上司であれば、他の関係者も巻き込み複数人で会議や打ち合わせを行ったり、苦手なクライアントであれば、上司や先輩に商談に同行してもらったりメールのCCに関係者を入れたりするといいでしょう。相手の意見やしてき、要望の矛先が自分1人に集中しないので、精神的な抜け道が確保できます。 ◆いくら苦手でも「やらないほうがいいこと」とは? 「苦手な人とはかかわり合いたくない」と無視しようとする人がいますが、仕事である以上、無視したり避けたりすれば間違いなくトラブルになります。トラブルの火消しのため、逆に深くかかわらざるを得なくなり、余計に辛くなるかもしれません。 無視したいぐらい苦手でしんどい相手に対しては、無視ではなく「無関心」でいることです。何を言われてもどんなことをされても、必要以上に反応せずに無関心を貫き、やるべき仕事はしっかりやり切る。心がブレそうになったら、目の前の仕事に意識を全力で集中させれば、相手に対するネガティブな気持ちも紛れるでしょう。