男女別学の県立高校共学化 「県教委として主体的に共学化を推進していく」と報告書 具体性なく…賛成派、反対派双方に不満残る
「男女別学の県立高校は早期に共学化されるべき」という埼玉県男女共同参画苦情処理委員の勧告から1年。県教育委員会は期限を迎えた8月、報告書をまとめた。男女の機会均等か、それとも伝統を維持するのか―。県民や在学、卒業生らを巻き込んだ議論の結末は、共学化を推進していくものの、具体的な時期や道筋は示さないというものだった。賛成、反対派双方に不満が残り、訴えが続く中、少子化や学びの多様化で学校の統合は加速している。 共学化反対を訴え行進 「共学校も別学校もそれぞれ魅力」「別学の環境だと、個性をさらけ出すことができる」 県教育委員会は8月22日、「県教委として主体的に共学化を推進していく」とする措置報告書をまとめ、県男女共同参画苦情処理委員に提出。日吉亨教育長は「県教委として議論が深まり、今後の教育行政にとって大きな意義があった」と振り返ったものの、賛成、反対派双方に不満が残った。 県立男女別学高校の共学化を求める市民団体「共学ネット・さいたま」は9月、担当部署の設置などを日吉教育長に要望した。共学化を完了させる最終期限を定めることや全校の共学化を分け隔てなく推進することなどを求め「優先されるべきは人権であってニーズではない」と述べた。 一方、「県立浦和高校同窓会」は11月、報告書の結論が不当だとして是正を求める意見書を大野元裕知事宛てに提出。県教委の方針について知事に県行政庁の代表として責任があると主張し、「改めて報告書の精査を」と訴えた。 ネット上でも、「別学という学びの選択肢を減らしている」「当事者の子どもの声を無視した方針」「男女共同参画を目指す上で共学化が効果的なら推進するしかない」「教育に男女の区別は必要ない。男女の中で多様性が教育されるべき」とさまざまな意見があふれている。 別学の在校生らを中心に共学化反対の声は大きい。11月に行われた県学校新聞コンクールで、共学化に関するトピックの掲載で受賞した県立浦和高校新聞部は、精力的に活動を続け、10月に在校生を対象に報告書などについてアンケートを実施。結果は「報告書を支持しない」の生徒が約70%、「県教委の対応が不適切」が約55%と、過半数の回答者が不満を抱いているとした。 2年生で新聞部部長の石川翔一さん(17)は「県教委の方針は理解できるが、教育の多様性の視点からの共学化は筋が違う」と指摘。1年生の氏家永翔さん(16)は「在校生からは『共学化したら何のために浦高に来たのか分からない』との声も聞く。県教委には生徒への説明や意見交換を求める」と話す。 今月26日には「県立高校の共学化に反対する会」が、男子校・女子校の維持を訴えるデモ行進を行い、別学校の在校生やその保護者ら約250人が参加した。 県教委が結論の背景として挙げているのが、「少子化」と「学びの多様性」だ。県教委は、「魅力ある県立高校づくり第2期実施方策」を策定。学校を統合し、専門分野の学科のある新校の設置を打ち出している。 少子化や特色ある学校づくりの高校再編の流れの中で、男女別学を維持する12校も例外でいられるだろうか。前回の男女共学化の議論があった2003年以降では、別学だった3校が他校との統合や一部の学科で共学化された。 県教委は今月末、共学化推進の具体的な計画について局内で検討を続けているとし、「さまざまな意見を踏まえ丁寧に検討していく」と述べたが、8月に県教委と別学校の生徒有志が行った意見交換会で、県教委はこんな見方を示している。「地域によって子どもが減少している中での、性別による学びの選択肢の偏在は看過できない」「教育ニーズの多様化に合わせて教育も変化しないといけない」