全人類は既に「資本主義の限界」にブチ当たっているといえるワケ…日本だけではなかった
「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」 そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。 『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第1回
資本主義の定義とは
本論に入るにあたり、まず、最も基本的な用語の定義から始めたい。それは、本書の主題である「資本主義」という言葉がそもそも何を指すのかだ。資本主義という用語を最初に用いたのは、フランス人の社会主義者で歴史家、ジャーナリストでもあったルイ・ブランという人物で、1850年だったとされる。 だが、1850年以降に資本主義が「誕生」したのかというと、そんなことはなく、資本主義を確立させたと広く認識されている産業革命はそれより100年以上前の18世紀前半に始まっている。もっと言えば、資本主義の成立を1600年のイギリス・東インド会社(オランダ・東インド会社だと言う専門家もいる)設立と関連づける向きもあれば、それよりはるか昔の13世紀、利子率がローマ教会によって公認されたことなどに起源を求める見方もある。 特定の名前を持たないまま誕生し、進化、普及していった経済の在り方に後から名前が付けられ、それが定着したわけだが、定義の仕方は資本主義のどの部分に注目するかによって大きく変わってくる。
自己増殖プログラム
では、本書では何を指して資本主義と呼ぶのか。ここでは、資本が利益を生み、その利益が再投資されてさらに大きな利益を生むという拡大再生産のプロセスに注目して議論を進めたいと思う。 すなわち、パン屋が自らのオーブンで焼いたパンを売って儲けても、それ自体は資本主義的生産様式とは言えない。パンを売って得た利益を、より大きなオーブンを買うなどして生産能力を増強することに充てたとき初めて、資本主義の歯車が回り始める。 オーナーはいずれ1店だけでなく、2店目、3店目と多店舗経営に乗り出すかもしれないし、ゆくゆくはフランチャイズでチェーン展開を図ることも考えられる。 元は単なる個人商店だったのが、今では上場企業となり、売り上げも利益も順調に伸びているのに、新規出店のペースが落ちたというだけで投資家に見限られ、株価急落の憂き目に遭う恐れもある。ここまで来れば、立派な現代的資本主義のプレーヤーの誕生である。 このような資本の自己増殖プロセスを指して、本書では資本主義と呼ぶ。