必ず知っておきたい〈新NISA〉の出口対策…運用資産の売却→現金化の「ベストタイミング」と「方法」は?【CFPが解説】
株価が上昇したら、売ってもよい?
運用してから5年後、継続的に株価が上昇しているためにすべて売ってしまう人もいます。この場合でも、目的をしっかりと持ち、利益を抜くという目的があるのであれば、問題はありません。しかし、例えば「ドル・コスト平均法」でコツコツ買っていく場合、必ず経験するであろう「株価の暴落」のタイミングで、辞めないことが最も重要です。 株の「売り時」に関して、最も困る事例を紹介します。ドル・コスト平均法で「S&P500」を買ったが、市場の状況が悪く、まったく増えない状態にあるとします。この時点で、すべての株を売ってしまい、以降、投資から手を引いてしまう。これが最も「悪い」パターンです。 反対に、最もよいパターンは、悪い市場状況を経験しても、継続してドル・コスト平均法で投資をすること。実は、これが最も「正解」のパターンになります。
ゴールよりも手前で投資を辞めてはいけない
現金化するときは、しっかりと「ゴール」を設定し、そのゴールに到達して初めて「売る」「売らない」を判断するべきです。 ただし、この「ゴール」は、伸ばしても問題ありません。例えば、60歳で現金化することをゴールに設定します。いざ、60歳を迎えてみて、「まだ運用を続けたい」と思ったら、そのときに考えればよいのです。 避けるべきパターンは、ゴールよりも手前で理由もなしに解約する、すなわち「投資をやめてしまう」ことです。これは絶対に避けてください。
投資で貯まったお金は、「一括」で現金化するべき?
ここからは、老後資金運用をドル・コスト平均法で運用し、数千万の資金が貯まったケースを想定して解説します。 貯まった資金は一括で現金化するべきか。それとも、運用は継続しつつ、年金だけで足りない分を、少しずつ解約していくほうがいいのか。方法はいくつか考えられます。 実は、インデックスファンドであれば、平均的に主要株価指数に上昇していれば、大体、年利10%程度で回ります。「S&P500」や「NYダウ」、「NASDAQ」、「日経平均株価」、「オルカン(オール・カントリー)」は、10年を超えると、大体平均10%で運用が回っていくという考え方が一般的です。 しかし、老後はリスクを取りたくないと考える人も少なくないと思います。そういった人は、リターンが落ちる可能性はありますが、ある程度のまとまったお金で「債権を買う」という方法もあります。購入する債券は、国内に限らず海外という選択肢もあります。 海外の債券の場合、利回りは5~6%程度のものはたくさんあります。為替リスクや地域によっては信用リスクもありますが、「クーポンレート」といって、額面に対する利率が日本の債券と比べて高いものが多いのが、現実です。 また、株式投資という選択では、株価上昇によるキャピタルゲインだけではなく、配当というインカムゲインに注目するというのも1つです。例えば、米国には配当貴族と呼ばれる銘柄が存在します。 “配当貴族”とは、S&P500の構成銘柄のうち、25年以上連続で増配している銘柄のことを指します。連続増配をしているので、比較的高配当になる銘柄が多く、株価が下がっても配当でしっかりとリターンを得られるというのが特徴です。 特に米国では、ある程度まとまった資産をこのような連続増配銘柄に投資をすることで、基本的に株価の動きを気にすることなく、運用を継続する投資家もいます。 金融商品はさまざまなものがあるので、商品性を理解したうえで、自分がどの商品をどのように選ぶかはとても大切です。 また、将来使うお金は、どのくらいの期間を通じて使うのか、ということも考える必要があります。例えば、老後資金の後として20年、30年とある程度期間をかけて取り崩すということであれば、その期間は長期間にわたるので、一括で取り崩すよりも、運用しながら取り崩しをするほうが、将来使えるお金ははるかに増えるはずです。 将来的には、一括で現金化するかどうかを考えるよりも、使う期間も把握したうえで、その時点でどのような商品を選ぶかを考えることをおすすめします。 市川雄一郎 グローバルファイナンシャルスクール(GFS)