センバツ高校野球 能代松陽、守り勝つ 仙台育英、激戦制す /宮城
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は大会第4日の21日、能代松陽(秋田)は21世紀枠の石橋(栃木)と対戦し、3―0で完封勝ちした。仙台育英(宮城)は慶応(神奈川)と延長十回タイブレークの激戦の末、2―1で勝利した。両校の3回戦は大会第9日の26日に行われる予定で、能代松陽は第1試合で大阪桐蔭(大阪)と、仙台育英は第4試合で龍谷大平安(京都)と対戦する。 ◇能代松陽、守り勝つ 好投の森岡支える 初のセンバツに挑む能代松陽は初戦から持ち味の堅い守りを見せた。エース右腕の森岡大智(3年)は初戦で敗れた昨夏の反省から「冷静にいこう」とマウンドに向かうと、立ち上がりから3者凡退に抑えた。 その裏に俊足の淡路建司(同)が出塁すると虻川颯汰(同)が右前打で続き、1死一、三塁で打席には斎藤舜介(同)。「何が何でも先制点を取りたい」と放った左犠飛で淡路を還した。チームに貢献した斎藤に父智晃さんは「のびのびやっている」と目を細めた。 中盤は打線が続かず我慢の展開に。ただ守備の集中力は途切れず、遊撃手の保坂大悟(同)を中心に守備範囲の広さと正確な送球で無失策。被安打2と好投の森岡を支えた。アルプススタンドから見守ったマネジャーの佐藤愛羽さんは「緊張しているが、1点1点重ねてくれることを信じている」と拳を握りしめた。 試合が動いたのは八回。先頭の大高有生(同)が中前打で出塁すると淡路が続き、重盗を成功させた。チャンスが広がったことで佐々木駿介(2年)の三塁ゴロが敵失を誘い、2点を追加して試合を決めた。 主将の大高は次戦に向け「短打でつないでチャンスを広げ、得点したい」と意気込んだ。【猪森万里夏、中田博維】 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇俊足生かすプレー徹底 能代松陽 淡路建司中堅手(3年) 「チーム一」の俊足が生きた。一回裏、先頭の大高有生(3年)が内野ゴロに打ち取られると、「自分がカバーしなければ」と打席に立った。打球は投手前で跳ねて二塁方向に転がった。際どいところだったが「なんとかセーフになろう」と走り込み、無事に出塁。内野安打とし、後続2人の安打と犠飛で先制のホームを踏み、スタンドを沸かせた。 センバツ出場が決まる1カ月ほど前、自身の課題は「体力」と分析。一日計10キロの走り込みを継続してきた。雪のため屋外練習ができない期間は、スクワットやジャンプで下半身の強化に努めた。 その成果を本番でいかんなく発揮。終盤八回に大高に続いて左前打で出塁すると、相手が警戒する中で重盗を成功させ貴重な追加点に貢献。工藤明監督は「足を生かすためにミートに徹するという自分らしさを徹底してくれた」と評価した。次の大阪桐蔭戦を見据え、「相手は日本一のチーム。全てを出し切って勝ちに行く」と力強く語った。【猪森万里夏】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇仙台育英、激戦制す 投手陣、気迫の投球 「守り勝つ野球」を掲げる昨夏の覇者・仙台育英は雨が降る中、強力打線の慶応と対戦した。一塁側のアルプススタンドには総勢約450人の応援団が駆けつけ、球場に声援が響き渡った。 二回表で迎えた1死満塁のピンチで先発の仁田陽翔(3年)に代わり、エースの高橋煌稀(同)が登板。「1点もやらない」と気持ちのこもった投球で、続く打者2人を三振に打ち取った。高橋は打撃でも貢献し、五回2死一、三塁から左適時打で1点をもぎ取ると、応援団から大歓声が上がった。 終盤まで高橋の好投で慶応打線を封じたが、九回に1点を返されて追い付かれると今大会初のタイブレークに突入した。2死満塁で迎えた打者は5番の清原勝児(2年)。慶応の応援が地鳴りのように響く中、継投の湯田統真(3年)が気迫のピッチングで三振に仕留め、再び流れを引き寄せた。 その裏、2死満塁で主将の山田脩也(同)に打席が回った。球場中が息をのんで見守る中、サヨナラの左適時打を放つと、応援団は飛び上がって喜んだ。野球部で応援団長の熊田翼さん(同)は「チームを信じてここまでやってこられて良かった」と目を潤ませた。【平家勇大、竹林静】 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇自分信じ一球で決める 仙台育英 山田脩也主将(3年) ドラマは延長十回タイブレークに待っていた。須江航監督に「楽しんでこい」と送り出された2死満塁の好機。初球のスライダーを鋭くはじき返した。サヨナラの手応えを感じた直後、球場が大歓声に包まれた。 夏の甲子園で優勝を果たしたが、その後の明治神宮大会で大阪桐蔭に敗れて感じたのは「一球の精度」の違いだった。再び日本一のチームになるため、攻撃でも守備でも意識を徹底した。打撃練習でも一球で決めることを自らに課した。 次第に調子を上げ、須江監督からも「慶応戦の鍵を握るのは山田」と太鼓判を押されて臨んだ。ただ序盤から相手投手の好投に苦戦し、4打席は全てフライアウトに倒れた。最後の打席、「ここで決めるために積み上げてきた」と自分を信じ、一打を決めた。 辛勝に胸をなでおろしながらも、すでに前を向く。「反省点をすぐにつぶして、次の準備をしたい」。「夏春連覇」に向けて一歩踏み出した。【平家勇大】