ヤット復帰でガンバ再生を目指す!新戦力の活躍が上位進出のカギを握る
13位、15位、16位。近年、J1でもがき苦しんできたガンバ大阪にとって2024年は反転攻勢のシーズンになると予測する。なぜか。いくつかの理由を挙げることができるが、浮上が見込める最大の要因は、クラブのレジェンドである遠藤保仁氏のコーチとしての復帰だろう。ご存じのように、J1で史上最多となる672試合に出場し、103得点をマークした不世出の名選手。現役時代からチームに欠かせない「潤滑油」として、さまざまなタイプの選手の良さを引き出してきた。アラウージョ、大黒将志、バレー…。遠藤コーチによって輝いたストライカーの名前を挙げれば、きりがない。その貴重な経験は、新人コーチとして臨む指導の現場でも必ず生きるはずだ。
ヤットの帰還で常勝ガンバ大阪復活なるか・・・
激しい言葉や大げさな身振り手振りでチームメートに檄を飛ばすのではなく、さりげなく気を使い、自然な立ち居振る舞いで全体を活性化させる。2005年の初タイトル、2008年のアジア制覇…。ガンバ大阪が遠藤コーチとともに常勝軍団となっていった過程を知るクラブ関係者は「困った時に、みんながヤット(遠藤コーチの愛称)を見る。ガンバ大阪のヤットから、ヤットのガンバ大阪になっていた」と当時を振り返る。 現役時代の遠藤コーチはガンバ大阪でも、日本代表でも、飄々とプレーしながらピッチ全体を俯瞰し、ここぞというときに決定的なパスを出す名手だった。多くの人が「司令塔」「攻撃のスイッチ」といったイメージを持っているだろう。しかし、遠藤コーチが主戦場にしていたボランチ(守備的MF)の選手に求められるのは、当然ながら、攻撃の能力だけではない。最終ラインの前に位置する守備の要として、体を張って相手FWの突破を食い止め、激しいプレーをいとわずにボールを奪取する泥臭さも不可欠だ。遠藤コーチはときに、そんな役目を自ら買って出るときがあった。 「きょうはヤットゥーゾになった」。当時、そういう荒々しいプレーを得意にしていたイタリア代表のMF、ジェンナーロ・ガットゥーゾにちなみ、担当記者の間でそう形容されたこともある。 何が言いたいのかといえば、遠藤コーチのプレースタイルの多様性である。抜群のポジショニングでボールを受け、数手先まで読んだ味わい深いパスを前線に供給するだけではない。ボールを「止める」「蹴る」といった基本を大切にすることや、黒子に徹してチームに勝利をもたらすことの重要性も知り抜いている。そして、自身が2000年のシドニー五輪や2006年のワールドカップ(W杯)ドイツ大会で味わったように、ベンチ入りメンバーから外れたり、出場機会が与えられなかったりした選手の悔しさも分かっている。だからこそ、固定観念にしばられることなく、さまざまな立場の選手とフランクに接することができるのだ。日本代表でベテランの域に入ったころ、インタビューで新たに日本代表入りした後輩選手との接し方についてこんな話をしていた。「ああだ、こうだと言い過ぎるのも、かえって混乱するかなと僕自身は思っている。コミュニケーションなどはピッチ外の時間が多いので、食事のときに話すというのを積極的にやっていけば、自然にチームに入っていけると思う」。そうした自然体のスタンスはコーチとなった今も変わらないように思う。