4度目の核実験 北朝鮮はなぜ核を持とうとするのか?
そのような状況において、北朝鮮は核兵器とミサイルを柱として軍事力を強化することに努めました。金正日総書記の時代には「先軍」という軍事優先主義をすすめ、金正恩第1書記は、経済成長と核兵器が二本柱の国策だとして力を入れています。 核兵器もミサイルも国際社会にとっては大問題です。しかし、北朝鮮にとっては、国家としての生死が掛かっています。北朝鮮が国際社会の意向を無視し続けることは誠に遺憾ですが、国際社会の言っていることを聞け、そうしないと制裁を強化すると言うだけでは解決困難な問題であると思います。 北朝鮮が核兵器を開発しても米国とは比較にならないという軍事的指摘もあります。しかし、北朝鮮は、米国を攻撃するためでなく、米国が北朝鮮を攻撃すれば高い代償を払うことになることをアピールしようとしている可能性があります。
解決のカギを握るのは米国だけ
では、今後どうすればよいかですが、カギを握っているのは米国だけです。しかし、米国と北朝鮮の間には大きなずれがあります。米国はグローバルパワーとして、世界各地で活動しており、とくに中東での対応に忙殺されており、北朝鮮問題は、同国を取り囲んでいる軍事、経済大国、つまり、中国、韓国、ロシア、日本で解決してほしい、という考えです。 特に中国に対しては期待が大きく、二言目には中国が北朝鮮に対する影響力を強化してほしいと言っています。理屈からはそれは可能なはずですが、北朝鮮は中国の忠告を聞き入れようとしません。自らの存続にかかわることだからでしょう。これは何回も繰り返されてきたことで、中国が北朝鮮の核開発を止められないことは明らかです。 北朝鮮の核問題を解決するには、米国、北朝鮮、中国の間で繰り返してきたこの奇妙な三角関係から脱却し、米国が北朝鮮と直接交渉し、北朝鮮の地位を保証するか、そのための条件いかんなどについて結論を出すことが必要です。米国は気乗りしないかもしれませんが、そうすることが結局はすべての国にとって利益となるでしょう。したがって日本としても、米国がそのような考えになるよう、側面から協力しつつ働きかけるべきだと思います。
■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹