宇宙に広がっている謎の「ナノヘルツ重力波」の存在。衝撃の観測報告と「時空の歪み」を生み出した源とは?
ナノヘルツ重力波の発生源はなに?
重力波天文学に関する知識をお持ちの方なら、LIGOが初検出した重力波イベントの観測時間が、1秒間にも満たなかったことを覚えているかもしれません。このような重力波は、大質量天体が合体するときに生じます。実際、LIGOが初検出した重力波は、ブラックホールの合体によるものだとされています。 では、今回、チーム・ナノグラブが存在を報告した超長波長の重力波はどのようなものだったのでしょうか。 彼らが捉えた重力波は、周波数が約1ナノヘルツ、波長にして数光年という途方もないものです。我々からもっとも近い恒星であるケンタウルス座α星までの距離が約4光年ですから、その距離に匹敵するような非常に長い波長の重力波だったのです。 では、このような重力波はどうすれば生まれるのでしょうか。 このような重力波をつくるためには、とてつもない質量の天体が何らかの運動をするか、もしくは宇宙空間そのものが大きく歪(ひず)まなければ生まれません。じつは、これが肝(きも)となります。 以降の記事では、この重力波の正体はなにか。実際の観測に至るまでの理論的な背景をもとに、その考え方、そしてこの宇宙探査の新しい扉、そしてその向こうに広がるであろう新しい景色を紹介したいと思います。 ---------- ----------
浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)