森川葵のバランス感覚に優れた表現力 『大奥』お知保の愛と野望を貫き通すたくましさ
いよいよ第二章に突入した『大奥』(フジテレビ系)。倫子(小芝風花)と家治(亀梨和也)の心は日に日に深い愛に溢れていく。その一方で、側室のお知保(森川葵)は無事に男児を出産することになる。これにより大奥の力関係は大きく変わろうとしていた。どんなことが起きようとも、愛と野望を貫き通すお知保のたくましい佇まいがキラリと光る。 【写真】『大奥』栗山千明が演じる松島の局 初回からインパクト抜群だった森川葵演じるお知保。意地の悪そうなツンとした表情で倫子をこれでもかとチクチクいじめ続け、ついに側室にまで成り上がったというキャラクターには反感をおぼえた視聴者もいたかもしれない。しかし、それも森川の類稀な芝居の力があってこそだ。 森川は中学3年生のときにファッション雑誌『Seventeen』の専属モデルオーディションでグランプリに選ばれ、モデルデビューしたことから芸能活動を開始。そこから瞬く間に映画『Love ToRAIN-ラヴトレイン-』(2012年)にて初主演を飾り、役者デビューを果たした。さらに映画『チョコリエッタ』(2015年)では菅田将暉と共にW主演を務め、丸刈りで芝居に挑むなど作品との向き合い方においても注目を集めてきた。『おんなのこきらい』(2015年)では異性の心を弄ぶかわいいOL役を、『恋と嘘』(2017年)では三角関係の真ん中に立つ女子高生役を、そして『賭ケグルイ』シリーズではツインテールの人気キャラ・早乙女芽亜里役を演じるなど、一癖も二癖もある役をこなしてきた。 丸刈りになったかと思えばロングヘアで登場し、またベリーショートになり……とビジュアルさえコロコロと変化する森川だが、実は思わぬ特技も持っている。バラエティ番組『それって!?実際どうなの課』(中京テレビ・日本テレビ系)では、スポーツスタッキングを中心に、ダイス・スタッキング、テーブルクロス引きなど、ちょっとやそっとでは達成できない技に次々と挑戦。どれも短時間で習得するという脅威の才能を見せ、「ワイルド・スピード森川」と呼ばれることになる。実は「スポーツスタッキング」アジア大会では金・銀・銅メダル獲得という快挙を達成。今や女優としての活躍にとどまらず、“なんでもできる人”というイメージさえ定着しつつある。 そんな森川が本作で演じているのは、実家が貧しいがゆえに「女性が自由に暮らすには大奥で側室となり成り上がっていくしかない」と闘志を燃やすような女性だ。倫子に対して酷いいじめを繰り返していることから、言ってしまえば「嫌なやつ」として描かれるお知保。だが蓋を開けてみれば、お知保にはお知保の事情があるのだった。貧困で苦労してきた背景や、家治を一途に思う心のうち、腹を痛めた子どもへの強い愛情など、嫌いになりきれない側面も十分に持っている。森川のバランス感覚溢れた芝居によってお知保の事情は説得力を増し、つい気持ちを動かされてしまうのだ。 倫子を差し置いてお知保だけに子どもが産まれ、しかも世継ぎになるかもしれないという今、倫子とお知保の関係はこれまで以上に複雑なものになっている。そして次回予告では、いよいよ倫子にも妊娠の兆しが。ここから倫子と家治の関係の変化はもちろん、お知保を取り巻く環境も大きく変わるに違いない。倫子の一方通行の優しさがお知保の心に届く日が来るのかを、しっかりと見届けなければならない。
Nana Numoto