ブリヤート族の結婚式。新婦は人妻になった証に髪を分けて二つに垂らす
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
夏にフルンボイル市に行った時は、運良くブリヤートの結婚式に参加することができた。ブリヤートの結婚式は、昔から他の地域と著しく異なっている。例えば、他のモンゴル地域では太陽が昇る前に新郎が新婦を迎えにいくのが一般的だが、ここでは午前中は新婦の家で宴会が行われる。 午後になってようやく新婦を送り出すと、新婦側の宴会に出ていた親戚や友人たちもぞろぞろと新郎の家に向かう。新郎の家にも宴会場が設けられていて、新婦側をもてなす。 新婦を新郎が迎えに来ないことが、私にはとても不思議に感じられた。 新郎の家に新婦が到着してから行われる最も大事な儀式は「ウス・ハガルフ」と呼ばれている。直訳すると「髪を分けること」。女性は、髪を分けて二本に垂らすことが結婚した証になるのだ。ウス・ハガルフが終わると、新郎側が準備した衣装を身にまとって結婚式場に出る。 結婚式が始まると、新郎と新婦がみんなに紹介される。さらに両親や親族の紹介も順に行われ、紹介された人たちがあいさつをする。その間、披露宴に来た招待客たちは歌を歌って、会場の雰囲気を盛り上げながら、2人の門出を祝福する。(つづく) ※この記事は「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第14回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。