<旋風・十勝からセンバツへ帯広農>第1部 出場決定までの軌跡/下 雪上でシート打撃 鋭い打球、強豪校を意識 /北海道
帯広農のある帯広市も冬はグラウンドが雪に埋まり、氷点下10度を下回る寒さは珍しくない。強豪校と違い設備に恵まれていない中、環境を逆手に取った練習を工夫してきた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 あえて凍った雪のグラウンドでシート打撃を実施。雪上で弾む打球は土よりも格段に速く鋭い。例年2月に始める雪上練習だが、21世紀枠の道候補校として迎えた2020年は1月上旬には本格化。19年は打球で鼻を骨折した選手がいたため、20年からフェイスガードを着用。選手は果敢にボールに食らいつく。19年の秋季全道大会で三塁を守った梶祐輔選手(2年)は「グラブを下から出し、ショートバウンドでもしっかり立てないと止められない」と守備力向上への効果を明かす。 また、農業高校だけに平日は時間外実習があり、全体練習は週末だけ。そこで選手各自が「野球ノート」を作り、目標や反省点を書き込み、自主練習に目的意識を植え付けた。全体練習は日々の成果を試す重要な機会と集中するようにした。 秋季全道大会で初の4強入りとチームとしては結果を出した一方、投手陣の制球力や記録に表れない守りのミスといった課題も明らかになった。春から起用され、新チームでは正捕手を任された渋谷悠稀選手(1年)は、札幌日大との全道大会準決勝で犠打を処理し損ね失点を招いた。前田康晴監督から「お前が考えなきゃ勝てない」と言われ、ステップアップを目指す。自主練習では、捕球や送球の基本を徹底し、投手陣と対話を重ねながら配球も研究。全道大会で登板した遊撃手の千葉俊輔選手(2年)は、室内練習場で数球投げると球筋やボールの回転について意見を求める。率直に改善点を伝える姿勢に千葉選手も「頼もしい限り」と絶大な信頼を寄せる。 21世紀枠によるセンバツ出場が決まった翌日も、選手たちは雪の積もったグラウンドで寒風を一身に浴びながら、シート打撃で鋭い打球を追っていた。前田監督は「このくらいの打球が捕れなければ甲子園で勝てない」と、全国の強豪校を具体的に意識させている。 限られた練習時間の中、選手たちは個々の努力と考えを工夫してチームの力にまとめ上げようとしている。【高橋由衣】