山川の人的補償で甲斐野が西武へ。これは素晴らしい補強になりました【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】
シーズン中、対広島戦になると、多くの選手たちが巨人のベンチがある一塁側に来ていました。目当てはチョー(長野久義)さんへのあいさつのためです。ご存じのとおり、チョーさんは人格者。彼にあいさつをする広島ナインを見ていると「広島にいい影響を与えていたんだな」と感じていました。 【選手データ】甲斐野央 プロフィール・通算成績 チョーさんは丸(丸佳浩)の人的補償で2018年オフに広島へ移籍しました。当時は非常に大きな反響というか、騒ぎになった覚えがあります。巨人生え抜きのスター選手でしたから、賛否両論あったと思います。それでも彼が広島に行ったことで、いろいろないい作用が野球界に起こったのではないか、と広島ナインとチョーさんの関係を見て感じています。 今回、誤報となりましたが、西武からソフトバンクにFA移籍した山川穂高の人的補償で、和田毅が西武へ、という記事がスポーツ紙に出て、この日は野球界で非常に大きな騒ぎになりました。もし、この話が本当であった場合にはチョーさんのように、西武にもいい影響を与えるかもな、と思って動向を見ていました。 結局、結果は甲斐野央が人的補償で西武に行くことになりました。この人的補償という制度は非情だな、と思う方も多いと思います。 ただ、選手がFAの権利を得るのと同時に、球団側経営陣との折衷案で出来上がったものです。それをすぐに変更するには、今まで以上の痛みを選手が負う可能性もありますので、現状でやっていくしかないかなと。それと同時にこういう状況になったのが、2回目なので絶対数からすれば希(まれ)な例かもしれません。 さらにFAを行使したのが山川だったことが、今回の騒動にさらに輪をかけて大きくした可能性があります。これが例えば、ほかの西武の選手で、ソフトバンクファンが来てくれたらうれしいと思える選手だったら……和田が指名されても「今後の経験に生かされるかも」というような励ましの声援になっていたかもしれないですよ。いずれにしても今回は制度の問題でもないように思います。 一方で、西武に移籍する甲斐野は、追い風に乗る形になります。どんな西武ファンでもこの経緯を知れば応援すると思います。つまり、少し打たれても寛容に見てもらえます。移籍後に成績を残さなければ、という思いのある本人にとって非常にいい状況なのです。 それに昨季、巨人戦ではすごいボールを投げていました。これで勝ちパターンに入らないの? と思ったくらいですから。23年は3年ぶりの40登板以上を果たしましたから、24年は素晴らしい活躍をするのではないかと楽しみにしています。 もともといい投手が何人いてもいいのですが、投手陣が強い西武の中で、甲斐野が入ることでさらに強力になりますし、長い間投げてきている増田達至や平井克典などの負担軽減にもなります。いい投手を獲得したのではないかと思います。
週刊ベースボール