記者の目 大谷翔平「プレーしてほしいと言ってもらえたことが光栄」 求めていたチームプレーの結晶がやっと結実
ワールドシリーズ第5戦(ヤンキース6-7ドジャース、ドジャース4勝1敗、30日、ニューヨーク)米大リーグのワールドシリーズ(WS=7回戦制)の第5戦が行われ、ドジャース(ナ・リーグ)はヤンキース(ア・リーグ)に7―6で逆転勝ちし、4勝1敗として4年ぶり8度目の制覇を果たした。 【写真】ヤンキース・ジャッジと談笑する大谷 第2戦で二塁にスライディングし、苦悶(くもん)の表情を浮かべた大谷はこう思ったという。「最初はセーフだと思っていた」。約1カ月のポストシーズン取材で、これが大谷の野球観を象徴する一言だと感じた。5万以上の観衆が一瞬で静まり、ナインも心配し声をかける中、勝利につながる走塁のことだけを考えていたようだ。左肩が亜脱臼していたのに―。 記者会見で大谷に尋ねた。こういった状況に置かれても自身がグラウンドに立ちたいと駆り出される信条は何か。「このポストシーズンでけがをした後も、もちろん自分自身の中ではプレーする準備をしたいと思っていました。何より(チームに)必要だと言ってもらえた。プレーしてほしいと言ってもらえたことがすごく光栄。そう言ってもらえたことに感謝しています」。患部のMRI(磁気共鳴画像装置)検査を受けた後、同僚だけのチャットに真っ先に「試合に出られる」と打ち込み、ニューヨーク行きの機内に充満していたであろう不安感を払拭した。 強行出場した第3戦後、ロバーツ監督は「打席に立つだけで大きな仕事」と語った。故障以降はわずか2安打で、明らかに本調子ではなかった。だが、第5戦の同点の八回1死一、三塁。初球をスイングしたバットが捕手のミットに当たった。打者に近づきゾーンぎりぎりで捕球しようとしたのは大谷を警戒している証左である。満塁に追い込み、ベッツの決勝犠飛を導いた。存在だけで好影響をもたらした。 「そういう気持ちが自分の中で1年間頑張ってこられた要因なのかなと思っています」と最後に締めた大谷。二刀流でプレーするからこそ、より感じるのだろう。野球は一人では勝てない。仲間を信じ、信頼される。求めていたチームプレーの結晶がWS制覇で結実した。(大リーグ担当・横山尚杜)