『ブギウギ』に“安定したハラハラ感”を持ち込む存在に? 富田望生に期待が止まらない
ヒロイン・スズ子(趣里)にとっての最愛の人との別れが……。放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)は、またしても新たな章へと突入した。 【写真】演奏の指揮を取る羽鳥善一(草彅剛) 別れがあれば、出会いもある。それが人生というものだ。スズ子の人生にはまた新たな出会いが訪れる。小林小夜との出会いだ。演じるのは富田望生である。彼女の存在は“新章”においてどのような役割を果たすのだろうか。 母・ツヤ(水川あさみ)を失ったスズ子。それでも、彼女の人生は続いていく。すでに「梅丸楽劇団(UGD)」のスターであるスズ子は、これからもっともっと、時代を代表する大スターへと成長していくのだ。 そんな彼女の前に現れるのが小林小夜。スズ子のような歌手になる夢を持つ福島出身の女性らしい。奉公先から東京に逃げてきた彼女は、憧れの存在であるスズ子に弟子にしてほしいと願い出る人物だ。 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 ブギウギ Part1』(NHK出版)にて富田は「小林小夜は、私と同じ福島県の出身。親近感のある言葉使いと、思い立ったらすぐ行動するところは私とよく似ていて、台本に書かれている小夜の第一声を読んだ瞬間から、その映像がパーッと広がって『なんて奇跡のようなお役だろう』と思いました」と語っている。 『ブギウギ』への出演を願っていたという富田にとって、この小夜というキャラクターでの参加は何か運命めいたものがあるようだ。すべては偶然ではないのだろう。2019年度前期放送の『なつぞら』でヒロインの親友を演じて以来の朝ドラへの出演だという富田だが、まだ20代前半の若手俳優。けれどもそのキャリアはすでに10年を超えていて、この世代で彼女ほど信頼できる俳優はなかなかいないのではないだろうか。 先述した『なつぞら』で物語の序盤の盛り上がりを牽引していたことはいまだに記憶に新しいし、映画初出演作『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(2015年)ではオーディションにて主要キャラクターの役を射止め、当時はまだ十代ながら驚きの肉体改造(増量)を経て撮影に臨んだことは広く知られている。 “役を演じる”、“役を生きる”ということに対するスタンスが、彼女の場合は年齢や経験に関係なくプロフェッショナルなものなのだ。2021年に放送されたWOWOW版の『ソロモンの偽証』にも彼女だけ同じ役で出演していることから、製作陣からの信頼度の高さもうかがえるだろう。 映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年)や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)、『教場』シリーズ(フジテレビ系)などなど、期待の若手俳優がこぞって出演する作品には必ず参加しており、これらのことから富田の俳優としての立ち位置が見えてくる。 お笑い芸人のオードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の半生を描いた『だが、情熱はある』(日本テレビ系)にて山里の相方である山崎静代を演じ、その再現性を超えた好演ぶりは今年のエンターテイメントシーンのひとつの大きな話題になったと思う。この12月には、福原充則と山西竜矢といった演劇界の鬼才がタッグを組んだ舞台『ジャズ大名』に出演。誰もが作品にその存在を欲するーーそれが富田望生という俳優なのである。 先に触れたガイドによると、小夜は大好きなスズ子の隣で失敗ばかりで、「次に何をやらかすのかと、ハラハラさせてしまうかも」と富田は述べている。 富田は心情を繊細に伝えることにも長けているが、全身を使った分かりやすい、パワフルな演技もいつも目を惹く。極めて“安定したハラハラ感”を『ブギウギ』の世界に持ち込んでくれるのではないだろうか。
折田侑駿