世界が憧れる京都「西陣織」は“エルメス”になれるのか シャネル幹部も作品を見て涙を流す「世界最高峰の『美』」その魅力と重大な課題は?
約285年の歴史を誇る京都・西陣織の織元「誉田屋源兵衛(こんだやげんべい)」の店に、数年前、フランスのシャネル本社より経営陣以下、社員100名の研修での訪問があったという。 渡航費だけでも莫大な費用がかかると思われるが、これはいったい、何を意味するのだろうか。「京都・西陣織」は新しい「エルメス」になれるのだろうか――。 国内外の投資会社でファンドマネージャーや投資啓発などの要職を20年経験後、投資の研究と教育を行うWealthPark研究所を設立した加藤航介氏。 【写真で見る】シャネル幹部も作品を見て涙を流した「世界最高峰の『美』」京都「西陣織」
英米で10年を過ごし、世界30カ国以上での経済・投資調査の経験を持つ加藤氏が、「投資のエバンジェリスト」という視点から、京都・西陣織を通して「日本の産業構造」を考察する。 ■日本の産業構造には大きく「見劣り」している点がある 京都の室町通三条下ル。京都駅から10分ほど北に向かった古い町屋には、約285年の歴史を誇る西陣織の織元、「誉田屋源兵衛(こんだやげんべい)」が店を構える。 美しく繊細な着物の「帯」で有名な西陣織は日本を代表する伝統工芸であり、十代目山口源兵衛氏は、世界的に有名な西陣織のプロデューサー兼経営者だ。
今回、私と源兵衛氏を引き合わせてくれたのは、ニューヨークで現代アートのレンタル・サブスクリプションビジネスのCurinaを経営する、コロンビア大学の後輩、女性起業家の朝谷実生氏だ。 「美と技術。日本の縮図でもある西陣織の魅力と課題を、加藤さんの視点で取材してくれません?」 朝谷氏にそう言われたとき、まず私の頭に浮かんだのは「京都・西陣織は、エルメスになるのか?」だった。 というのも、日本と世界の「産業構造」を鳥瞰すると、日本が大きく「見劣り」している点がいくつか見られるからだ。
アメリカとの比較では「IT・インターネット産業」、欧州との比較では「ラグジュアリー産業」がその典型といえる。 適材適所、比較優位。各国が持つ資源や国民性、文化・歴史的な背景などから産業構造に違いがあるのは当然であるが、昨今、インバウンド旅行者などにより、日本の「美」や「技術」が改めて世界で高い評価を受けている。 一方で、日本に「ラグジュアリー産業」が乏しいことは非常に興味深く、そして日本人として残念に思う。