“安全”だけど自由がない日本、“自由”だけど大雑把なオランダ。住んでわかった驚きの「子どもの育て方」の違い
オランダへ教育移住して3年目の夏、2年半ぶりに日本へ一時帰国しました。 久しぶりの日本はとても居心地が良く「なんて快適なんだ…」と感動する一方、海外での生活とのギャップに戸惑うことも。 電車でベビーカーは邪魔?母親に謝らせる日本と、手を差し伸べるオランダの決定的な子育て格差 そのひとつが、社会にあふれる禁止命題の多さです。 「〇〇しないでください」 「△△に注意!」 公共交通機関の中、駅構内、店舗の中…ありとあらゆるところに禁止の注意書きが書かれているのです。 日本で暮らしていた時にはこれらの表示になんの違和感ももっていませんでしたが、海外で数年暮らして帰ってきてみると、そのあまりの多さに驚きました。 そしてこれらの注意書きの多さは、日本とオランダの子育て観の違いにもつながっていると感じたのです。
危機管理に現れる海外との考え方のちがい
オランダにはご存じのとおり、たくさんの運河があります。 運河は特に柵などで囲われているわけでもなく、たまに落ちる人もいます。 日本にもしそのような危ない(?)場所があった場合、どうなるでしょうか。 「落ちても大丈夫なように、全員が上手に泳げるようにしよう!」 …とはなりづらいように思いませんか? 「落ちたら危ないので柵をつけよう」 こんなふうに考えるのが一般的ではないだろうか、と私は想像します。 しかし、そこを「全員を泳げるようにして自衛できるようにしてしまおう」というのがオランダです。 (オランダの子どもたちは水泳のディプロマを取得することが義務付けられています) 転ばぬ先の杖を与えるのではなく「転んでも立ち上がることができる方法を教える」のがオランダ流なのです。
ルールを守らせることと子どもを信用するということ
日本の安全対策、危機管理能力の高さは素晴らしいものがあると思います。 公共の場には細かなルールが定められ、そのルールを皆がしっかりと順守し、とても安全で過ごしやすい国であると感じます。 しかし時に、「ルールを守ること」ばかりが過剰に重要視されてしまうことがあるのではないか、ということを日本で感じたのです。 そしてそのことは、子どもにとって良い影響ばかりとは言えないのではないか…そのようにも感じました。 飲食物を食べてはいけない場所で、子どもが食べていないにもかかわらず先回りして「食べないでね」と注意されたり。 まだルールをやぶっていないのに注意されるという場面がたびたびあったのです。 街にあふれる禁止の表示についても同様です。 少し考えれば常識的にしないであろう小さなことまでルールとして表示されていると、逆に言えばルールとして定めなければ「その程度のことも守れない」と、子ども扱いされ信用されていないような気持ちになります。 悪いことをしたりルールを破った場合に注意されるのは当然ですが、ルールを完璧に守らせることばかりに意識がいってしまうと、子どもたちは「ルールをやぶると疑われている」ように感じてしまうのではないかと思いました。 小さなことのように思われるかもしれませんが、こうした小さな積み重ねが子どもの自己肯定感をうばってしまうこともあるのではないか…そう思い、少し複雑な気持ちになりました。