居眠り委員に批判の声も 協議会・審議会は何のため?
審議会の運営
審議会で出てきた意見は、どのように実際の政策に反映されるのだろうか。政策は、自治体では条例、国の省庁では法律という形を取るのが基本だが、それらの原案を書くのは自治体や国の公務員(官僚)である。自治体職員や官僚が法案や条例案を作成する際に、審議会で出てきた意見を参考にする。そのため、意見をどこまで取り入れるかは行政側の裁量次第といえる。審議会の答申の原案を行政側が用意していることもある。
課題と問題点は?
幅広い意見を政策に反映させるという点で審議会は重要な役割を担うはずだが、課題・問題点もある。上に述べたとおり、一般的に、委員の人選は行政側が行い、政策の原案も行政側が作成する。そのため、行政側が自分たちに都合の良い意見を言ってくれそうな人だけを委員に選ぶ可能性や、行政側があらかじめ用意した結論に審議会の議論を誘導してしまう可能性もありうる。そのような事態が起こると、審議会は、行政の結論に「お墨付き」を与えるだけの役割しか果たさない。審議会は官僚の「隠れ蓑」だと批判されることがあるのは、そうした事情のためである。 今回の件は、居眠りするなど、やる気のなさそうな委員がいたとされたことから世間の耳目を集めた。もし、本当はその政策にあまり興味がないのに行政側から頼まれて委員を引き受けた人がいたら、そうした委員は積極的に議論に参加しようとはしないだろう。必ずしも意欲的な人だけが選任される仕組みになっていないことが、今回の問題の背景にあるのではないか。
審議会の活性化に重要なのは
もちろん、すべての審議会が「隠れ蓑」というわけではない。活発に議論を行い、主体的に政策提案を行っている審議会も多い。たとえば、1990年代後半に活動した地方分権推進委員会は、霞が関の省庁を相手に奮闘して分権改革を進め、機関委任事務制度の廃止など大きな成果を上げた。同じく90年代後半に橋本内閣下で設置された行政改革会議は、侃々諤々の議論を経て中央省庁改革を実現させた。小泉内閣が進めた構造改革においては、経済財政諮問会議の民間議員が大きな役割を果たした。 このように活発な審議会に共通するのは、総理などの政治的リーダーが、その審議会に信頼を置き、政策形成に十分に活用しようという強い意識を持っていたことである。そのようなリーダーの下であれば、委員にも、優れた能力と多大な意欲を持ち合わせた人が就任しやすいだろう。審議会の活性化には、何よりもリーダーシップが肝要だといえよう。 --------------- 内山 融(うちやま ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など。