桜前線異常アリ開花が遅れ満開にならないところも…温暖化の影響より顕著に
「サクラサク」。合格の代名詞として使われてきた桜の開花。入学式の頃にソメイヨシノが満開となっていた地域では、喜びの春に色を添えてきた。ただ、そこでも最近は入学式には葉桜が当たり前に。ソメイヨシノの開花が早まっている中、温暖化がさらに進むことによって「開花が遅れる」「満開にならない」などの異変も起き始めている。 【写真で見る】温暖化によってソメイヨシノの開花が「開花が遅れる」「満開にならない」などの異変
開花予想外れる7年ぶりに平年より遅い開花
いち早く桜開花の便りが発表されることが多い福岡。2001年以降で全国トップの開花となったのは6回だった。ただ、今年は予想日を過ぎてもなかなか開花せず、連日駆けつけた報道陣が標本木と睨めっこをする状態が続いている。民間の気象会社は当初3月16日~19日の開花を予想していたが、26日時点でも開花とはならず。福岡では7年ぶりに平年の開花日(22日)より遅くなっている。
温暖化で早まったソメイヨシノの開花…今年はなぜ逆に遅く?
ソメイヨシノが開花するためには「暖かさ」だけでなく一定の「寒さ」も必要とされている(休眠打破)。実際、温暖な鹿児島より福岡が先に開花するのは、日本海側で適度な冷え込みがある上に、都市化によるヒートアイランド現象で比較的気温が高いことも影響しているとみられている。その福岡でソメイヨシノの開花日は、40年程前には3月末から4月初めが多かった。それが徐々に早まり3月半ばとなる年が増えていた。そうした中、今年はなぜ逆に遅くなっているのだろうか?
予測されていた桜前線の異常
桜前線の異常について警鐘を鳴らしてきたのが、気象学を専門とする九州大学の伊藤久徳名誉教授だ。2009年に発表した論文で「地球温暖化が進行すれば、上昇した気温の影響で開花時期がさらに変動、もしくは開花しなくなる地域が出てくる」と予測していた。 今年の状況について伊藤名誉教授は次のように分析している。 九州大学 伊藤久徳名誉教授 「今年は2月末の低温傾向が影響した。ただ、福岡では温暖化が進めば開花が若干遅れる傾向になっていく」
桜の近未来~なかなか満開にならずダラダラ咲く!?
いち早く異変が起きていたのが、鹿児島県の種子島だ。取材した2007年には、なかなか満開にならず、そのまま散っていた。こうした桜の異変が各地に広がり始めている。伊藤名誉教授は「数十年後には、東北のほうではどんどん開花が早くなる一方、南九州などでは満開にならなかったり、開花しないということが起こりうる」との見方を示す。地域ごとの予測は次の通りだ。 北日本では、休眠打破が十分で暖かくなる分、開花が早くなる 西日本では、休眠打破が不十分で遅れるものの、温暖化で早まる分と相殺されて、平年並みに。 南日本では、休眠打破が不十分で開花が遅れる。 九州大学 伊藤久徳名誉教授 「例えば福岡では、開花がだんだん遅れ、開花と満開の間が長くなる『ダラダラ咲く』状態になる可能性がある」
季節の風物詩が観測できなくなる!?
ソメイヨシノの開花など、生き物が教えてくれる季節の便りは、別の理由で届きにくくなっている。気象台が行う「生物季節観測」は、職員が実際に目にしたものを発表するものだ。それが、都市化の影響で季節の進み具合を知らせる生物が少なくなっている。さらに、観測の自動化が進む中で、各地の測候所が廃止に。種子島の測候所も2007年に廃止され、ソメイヨシノ開花などの貴重な観測の積み重ねが途絶えてしまった。気象の異変を静かに知らせてくれる生物たち。日々の生活に彩りを添える季節の便りがなかなか届かなくなる日が来るかもしれない。 RKB毎日放送 今林隆史(気象予報士)