“いつでも、どこでも”手話を当たり前に…全国初・全自治体で手話言語条例制定の岡山県【手話が語る福祉】
岡山放送
手話が語る福祉のコーナーです。「手話は言語」ということの理解や普及を推進する「手話言語条例」。岡山県は、全国で初めて全ての市町村で制定されました。条例が目指す社会とは?取材しました。 「おはようございます。令和6年10月2日水曜日の朝礼を始めます。何か連絡事項がある人はいますか」 午前8時半の笠岡市役所。地域福祉課の一日は、手話の朝礼でスタートします。 ろう者の船橋明日佳さん。2013年から市役所で働いています。笠岡市では2018年に県内で6番目に手話言語条例が制定されました。 職場でも手話を学ぶ人が増えています。 (手話を学ぶ職員は…) 「(手話に対する認識は)変わった。すごく身近なものになった」 「手話が上手な先輩はコミュニケーションがすごくスムーズで、自分もそうなりたい。お互いが思っていることを理解できるようになりたい」 (笠岡市地域福祉課 船橋明日佳さん) 「職場で手話でコミュニケーションがとれるのが1番大きい、スムーズに仕事ができる」 手話言語条例は、「手話は言語」であるという認識を広め、ろう者が手話を使いやすく暮らしやすい社会になることを目的としています。 岡山県内では2017年の高梁市を皮切りに進められ、2024年9月の早島町で27市町村全てで制定されました。全自治体での制定は全国で初めてです。 かつて手話は、ろう教育の現場で使うことが禁止されていた歴史があり、誤解や偏見から理解が進みませんでした。2011年に改正された障害者基本法でようやく言語として位置づけられ、その後、自治体ごとに手話の普及に向けた施策を実施する手話言語条例が広がり、現在、38の都道府県を含む544の自治体で制定されています。 この日、船橋さんたち笠岡市の職員が訪れたのは市内のこども園です。手話に触れるきっかけを作り理解につなげようと、地域の学校などで手話を教える活動にも力を入れています。 (手話を教えている様子) 「色を手話で表現するので、何色か分かったら見つけに行って」 「黄色」 (園児) 「(手話をしながら)ありがとう!」 ■蒜山高原 一方、蒜山高原や湯原温泉など県内有数の観光地がある真庭市では、市内に住む人だけでなく市を訪れる全てのろう者への配慮を条例に明記しています。 (真庭市福祉課 中島みゆきさん) 「真庭市では「手話言語施策ロードマップ」を作っている。条例の中の施策に当てはめて、市役所全体で考えているもの。各課がこんなことをやっていくということを決めて、3年の計画で進めているところ」 条例に沿って、各課の具体的な取り組みをまとめたロードマップ。真庭市では、3年前に条例を策定する時から、市内の聴覚障害者らで作るコミュニケーションの会「やまなみ」と、一年間、意見交換を重ねました。条例の施行後も年に2回、ロードマップのフィードバックを行っています。 (真庭市職員と「やまなみ」のメンバーとのやりとり) Q:遠隔手話通訳を練習で災害訓練の時にやった。どうだった? 「分かりにくかった」 「画面が小さくて見えにくかった」 Q:もう少し画面が大きい方がいいか。タブレットでやってみたが、手が画面からフェードアウトしたりした 「全体が見えなかった」 (真庭市福祉課 杉山修一課長) 「当初は(1)市の責務(2)市民の皆さんの役割(3)事業者の役割を考えていたが、「やまなみ」の皆さんと情報交換している中で「手話言語の理解や普及を推進する主体として役割を担わせてほしい」という話があった。共生社会に向けた動きの中の一つとして、当事者が主体的に関わってくれているのが大きい」 条例によって、こうした取り組みが進んでいますが、地域によって差があると岡山県聴覚障害者福祉協会の東会長は指摘します。 (岡山県聴覚障害者福祉協会 東久示会長) 「地域差はある。聞こえない人が少ない地域では対応が遅れている自治体もある。粘り強く話をしている」 全国に先駆けて、全ての自治体で条例が制定された岡山は、誰もが安心して過ごせるまちのモデルケースになるのでしょうか? (岡山県聴覚障害者福祉協会 東久示会長) 「社会の手話への理解が広がれば、私たちが行政に働きかけるときもスムーズにできるようになる。いつでもどこでも手話でコミュニケーションができる。それが当たり前の社会になる。そんな流れを作っていきたい」 手話でのコミュニケーションが当たり前、そんな社会が岡山から全国に広がることを期待します。
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