香川 マンUでの2年は空白か収穫か
香川が戦っている相手は自分自身、もっと厳密に言えばドルトムントで眩い輝きを放っていた「過去の香川真司」となる。セレッソ時代から常に試合に出場し続けてきた男が、一転してリザーブやベンチ外というどん底を味わわされたからこそポジティブな姿勢を保ち、目の前の壁を乗り越えるためのプロセスを見失わずにいられる。 マンチェスター・ユナイテッドでの日々から得た貴重な財産と言えるが、だからと言って現実に甘え続けることもできない。チャンピオンズリーグでは予選リーグを突破しているドルトムントだが、優勝候補に挙げられたブンデスリーガではまさかの不振にあえぎ、降格圏となる16位に低迷している。 先週末に再開されたリーグ戦でも、今シーズンから昇格してきたパーダーボルンに2点のリードを追いつかれてドローに終わった。ドイツから日本を往復した疲れが残っていたのか。香川も精彩を欠いたまま後半13分にベンチに下がっている。 ファンやサポーターから三顧の礼で迎えられたのは、すでに過去のこと。現状が続けば、エールはいずれブーイングに変わることを香川は理解している。 「結果を求められる場所であることは、自分でもわかっている。ドルトムントも厳しい順位にいるし、もっと自分と向き合っていくしかない。レベルの高い世界だから、結果を残さなければ厳しい戦いが待っている。そういうところで自分を追い込んで、リズムに乗ってきたい」 年内に残されているリーグ戦は5試合。その後はウインターブレークに入り、来年1月にオーストラリアで開催されるアジアカップ代表に香川が選出されれば、最長で1カ月ほどチームを離れる。その間には移籍ウインドーも開き、緊急補強などで状況が大きく変わるかもしれない。試合に出られる喜びと期待に応えなければいけないプレッシャーをその体に同居させながら、復活をかけた香川の挑戦は続く。 (文責・藤江直人/スポーツライター)