東大理系女子が参考書片手にルックブック 緩急で魅了するYouTuber・たむらかえに注目
QuizKnock、河野玄斗など知識を活かしたコンテンツづくりで注目を集める東大系YouTuber。そのなかでも、独特な視点で日常を切り取り、おもしろさで人気を博す女性YouTuberが現れた。その名も、たむらかえ。YouTubeチャンネル「たむらかえ2」を開設すると、1か月を経たずに登録者数5万人を達成。ほぼ毎日投稿されるトークを中心としたVlogは、2万~6万再生をコンスタントにたたき出している。 【写真】たむらかえによる「東大物理学科女子の私服がやばいかもルックブック」 また、同じく東大生YouTuberの「ベテランち」ともコラボを実施。着々とYouTubeでの活躍の場を広げながら、熱狂的なファンを生み出し続けている。彼女の動画は、なぜ視聴者を魅了するのだろうか。その魅力に迫ってみたい。 たむらかえの動画は、「東京大学理学系研究科物理学科の田村かえです」と早口の自己紹介から始まる。この自己紹介だけを聞くと、受験のノウハウやアカデミックなトピックスを解説すると予想されるが、彼女の動画はそうではない。あくまで日常の出来事や習慣について、独特な視点で論理的な解釈や感想が述べられる。最初の自己紹介からの意外性もあり、そのパワーと独特な考え方が非常におもしろく、つい笑ってしまう。ここに大きな魅力があると言えるだろう。 彼女の視点とワードセンスが相乗効果を発揮すると、非常に破壊力の強い動画が生まれる。その代表的な動画が、「東大物理学科女子の私服がやばいかもルックブック」だ。この動画では、スピード感と緩急、いい意味での展開の裏切りと鋭さがおもしろさにつながっている。 動画がスタートすると、2段ベッドの縁に折り重ねた、オシャレとは無関係に見える服の山をパンパンと叩き、「ルックブック」と名乗り、「ファッションに興味がないような人が洋服を紹介する」テンションで着ている洋服の紹介を始める。 清潔感のある日常系の洋服を紹介するのだろうか。それともかっこよくない・かわいくない洋服が登場するのだろうか……とドキドキしながら動画を見ていると、登場したのは、パリファッションウィークでも注目を集めるブランド・KENZOのワンピース。まさかのハイブランドだ。虚を突かれつつも、着こなす姿が非常に似合っていて、さらに驚かされる。 そして、間髪入れずに、洋服に合わせる参考書として、『詳解 力学演習』を紹介。ハイブランドの洋服に“理系の参考書合わせ”という新たな概念の誕生に大きく笑ってしまう。 このように、トーク・テロップ・ファッションを駆使し、飽きさせることなく、動画が展開していく。しかも、洋服の紹介を聞いていると非常に彼女のファッション愛が伝わってくる。次々と気持ちのいい笑いが生み出され、その結果、“好きに一途と”いう人物像も見えてくるのである。 ・15時間の作業時間を15分に編集 動画づくりへの脅威的なこだわり たむらかえの動画のおもしろさの背景には、丁寧な動画の編集の影響も大きい。こまめにカットが入り、心地よいテンポで動画が進んでいく。また、テロップは、ただの文字起こしではなく、動画のシーンに対しての突っ込みやボケを重ねるような言葉が流れる。これも動画のおもしろさを引き上げるひとつの要因だ。 このような動画編集技術は、Vlogを中心とした「たむらかえ2」の前に開設したお菓子づくりのチャンネル「たむらかえ」の運営時代に培われたものと思われる。 お菓子づくりの動画を見てみると、理系ならではの視点を加えたおもしろい語り口は健在だが、なによりも動画の撮影方法、おかしのつくり方、編集方法の丁寧さに目を見張る。同じく東大生YouTuberのベテランちとコラボをしたときに、「作業時間が10時間、動画の撮影時間が5時間、それを15分に編集している」と語っていることからも、このときに動画をつくるノウハウとスタミナを獲得したことがわかる。 企画・トーク・ワードセンス・編集力を発揮し、おもしろい動画をつくり続ける「たむらかえ」。この先、どのようにYouTubeの活動を進めていくのだろうか。新しいおもしろさをつくってくれるのではないかと大きく期待をしてしまう。
中 たんぺい