「あの男だけは、誰もが嫌っている」…石破茂新政権は長続きできるのか
渡した名刺を投げ、せせら笑う石破氏
だが、実は私にも、苦い経験が一つある。2012年9月の自民党総裁選で、「安倍vs石破」の自民党史に残る対決となった時のことだ。当時所属していた『週刊現代』で、「2強の誌面対決」のページを作るべく、両者にインタビューを申し込んだ。すると、両候補とも「30分だけなら」と快諾してくれ、同日に時間差でのインタビューとなった。 まずはカメラマンと二人で、国会議員会館の石破事務所を訪ねた。少し早く着いて、応接間で待たされたが、書棚には重厚な本がぎっしり並んでいた。失敬して何冊か取り出してみたら、どの本にも要所に赤鉛筆で波線が引かれ、文字の上の隙間には、本人の所感が書かれていた。 さすが政界一の勉強家と、尊敬の念を深くして待っていると、まもなく本人が現れた。私とカメラマンは、立ち上がって名刺を差し出し、「本日はよろしくお願いします」と頭を下げた。 すると石破氏、「言っとくけど、きっかり30分だよ」と言って、われわれの名刺を見もせずに、ポイと机上に投げ捨てた。そのうち一枚が床に落ち、慌ててカメラマンが拾って机上に置いた。 「君たちが聞きたいのは、キャンディーズのことかい? でもそんなこと聞いてると、時間が経っちゃうよ」 そう言って、ヘラヘラ笑い出した。そのうち、われわれの名刺を、まるでルービックキューブでも遊ぶように、両手でクルクルと回し始めた。そして5分経つごとに、「ハイ、あと20分!」などと言って、せせら笑う。 こちらは、当時問題になっていた中国との尖閣諸島の問題などを聞きたかったのだが、常に「上から目線」で、まるで初心者相手のように説くので、噛み合わなかった。一度だけ、石破氏の回答が事実関係と異っていて突き詰めたら、キッとなった。そして書棚に駆け寄り、関連関書を開いて「そうだな、アンタの言う通りかもな」とつぶやいた。 最後は、「ほらほら、ラスト5分だよっ、キッキッ」と冷笑した。そしてほどなく、おもむろに立ち上がると、無言のまま離席してしまった。27分が経ったところだった。 私はトイレにでも行ったのかと思い、しばし待ったが、ついぞ戻ってこなかった。カメラマンが三脚を片付けて、事務所を出た。石破氏の名刺は、受け取らずじまいだった。