黒部・宇奈月キャニオンルート開放持ち越し、10億円超の損失見込み
富山県の黒部宇奈月キャニオンルートの今年の一般開放が来年以降に持ち越しとなったことを受け、県内の関係者や旅行会社からは27日、「観光客を呼び込む起爆剤として期待していただけに痛手だ」などの声が聞かれた。黒部峡谷鉄道も今シーズンの全線開通が見送りとなり、地元に落胆が広がった。 キャニオンルート見学の基本となる行程の企画を担うJTB(東京)は「延期になったことは残念」(広報室)とした。各旅行会社はJTBの行程を組み込んでツアーを作るが、商品化できていない。 近畿日本ツーリストの高山剛富山支店長は「個人客の関心は非常に高い。ルートの魅力が高まる時期に販売できないのは惜しい」と肩を落とした。 黒部市宇奈月温泉は今年、3月の北陸新幹線の敦賀延伸開業に続きキャニオンルートの一般開放を控え、誘客のチャンスの年となるという期待が大きかった。武隈義一黒部市長は「残念で痛手だが、安全対策上必要なこと。時間ができた分、魅力を磨き上げていかなければならない」と語った。
「キャニオンルートや黒部峡谷鉄道の認知度は上がってきている。来年度には一般開放を始めてほしい」と求めたのは、黒部・宇奈月温泉観光局の川端康夫代表理事。宇奈月温泉旅館協同組合の濱田政利理事長は「改めて黒部奥山の自然の厳しさを実感した」と話した。 県によると、6月30日に一般開放する当初の計画通りであれば、11月末までの最大受け入れ人数は約8千人だった。 新田八朗知事は、販売額13万円程度と見込んでいた旅行商品の基本コースで換算すると10億円以上の損失になると見込む。北陸への観光誘客に追い風が吹く中での延期は「痛手」だとしつつ、一般開放までの期間でガイドの養成や土産品の充実など、魅力向上に努めるとした。