挺身隊員だったことは長く夫にも明かせなかった…「今も胸が痛い」 韓国での訴訟計12件で全て原告勝訴、「日本政府は傍観せず手助けを」
▽日本政府と韓国最高裁で異なる見解 日本政府は、原告の訴えを認めた判決が「日韓請求権協定に違反し極めて遺憾だ」としている。請求権協定は1965年の日韓国交正常化時に結ばれたもので、国と国民の間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記した。 一方、韓国最高裁は、植民地支配は「不法」だったと明言し、協定は植民地支配が不法か合法かの判断を棚上げにしたと指摘した。そのため植民地支配の不法性と直結する元徴用工や元挺身隊員らの慰謝料請求権は協定の適用対象外だと判断している。 日本政府と韓国最高裁の見解が異なる中、尹政権は昨年3月、韓国政府傘下の財団が支払いを肩代わりするという、日本に譲歩する内容の「解決策」を発表した。 だが、一部の原告らは拒否している。財団は、新たな企業の寄付などがなければ、勝訴が確定した全ての原告に支払う資金もない。 ▽「解決策」を受け入れる思いは… 不二越の判決が出た1月25日、林芳正官房長官は記者会見で「韓国政府は、財団が支給する予定である旨を既に表明しており、それを踏まえて対応されるものと考えている」と述べた。 同じ日、原告の金正珠さん(92)は判決後「日本は過ちを認め、韓国と共に補償をしてほしい」と韓国最高裁前で記者団に訴えていた。金さんは「解決策」を全面的には否定せず、日本側も謝罪や財団への資金拠出といった貢献をすることを望んだ。
三菱重工業に損害賠償を求めた元徴用工訴訟で昨年12月28日に勝訴が確定した朴相福さん(77)を、京畿道平沢の自宅で確定前日に取材した。朴さんは、平沢周辺から広島の工場に動員され被爆した元徴用工14人(いずれも死去)の遺族らの訴訟の原告団代表を務める。「私の考えでは、この原告団はほぼ全員が『解決策』を受け入れると思う」と述べた。 「植民地下で強制的に連れて行かれて働き、原爆被害を受けた。日本から賠償を受けないといけない」と2013年に韓国で提訴した。韓国政府が「解決策」を昨年3月に発表する直前、韓国外務省幹部らに「財団の金を受け入れるが、三菱か日本政府の謝罪が必要だ」と訴えたという。 5月、訪韓した岸田文雄首相は尹大統領との共同記者会見で、歴史問題に関し「心が痛む思いだ」と述べた。だが朴さんは、「よく分からない言葉」と話し、謝罪とは全く考えられないと受け止める。 徴用工問題に関する日本側の明確な謝罪はないままだが「私たちは田舎暮らしで、政府がするとおりにしようと思う」と語る。反対すれば野党が政治的に利用するのではないかという懸念も漏らした。
在韓被爆者問題に携わる日本の市民運動家から「日本人として本当に申し訳ない」という言葉を何度も聞いたため「自分はもう謝罪はいい」とも話した。それでも「実際に悪いことをしたのだから謝罪すればいいのに、なぜしないのか」とつぶやいた。