メーカー技術者から心機一転 長野に夫婦でビアホール開業
大手精密機器メーカーの技術者からビアホールの店主に――。若者たちのレストラン開業などが相次いでいる長野市で、33歳の元技術者が夫婦で繁華街に本格的なビアホールを開業、「商店街が元気になりそう」と期待を集めています。手の込んだ内装やピアノなど楽器も備えた独特の雰囲気の店内。若くして人生の舵(かじ)を大きく切った背景などを探ってみました。 【写真】「田舎暮らし」の断片(2)発想の転換が「八ヶ岳山麓で趣味三昧」実現
「サラリーマンやってきた人なら大丈夫」
長野市の中心市街地「権堂(ごんどう)」のアーケード街に昨年12月16日開店した「ビアホール・トピ」は、店の正面がすべて深い青に塗られ、工事中から「何ができるの?」と街行く人たちの注目の的でした。今、その店主となって「代表」の肩書を持つのは長野市出身の酒井孝之さん。昨年結婚したばかりの妻と2人で開店にこぎつけました。料理はネパール人のシェフが担当します。 酒井さんはメーカーで精密機器の回路設計を担当していた技術者。社歴8年の中堅で、「2016年に入って海外への長期出張の話も出ていた」。それがきっかけで一気に人生の方向転換へ。10月には退社してビヤホールへのチャレンジが始まっていました。
なぜ突然の方向転換? 「一昨年に結婚しましたが、そのうち家を建てたらローンもあるし、ずっと会社に勤めなければいけない。それで自分の人生いいのかなと考えました」。このまま10年、20年過ぎたあとの自分の姿が描けなかった……とも言います。 「多くの勤め人は現状に満足している。就職はイコール“ゴール”という考え方。私の勤務先は従業員を守るとてもいい会社でしたが、自分の中では目標もなく現状に満足していることでいいのかという気持ちがあって」 周囲からは「転身もいいが、世の中そんなに甘くないぞ」と異口同音に言われ、自分でも「素人が飲食業で成功するなんてあり得ないと思っていた」。ただ、長野の地元に長年飲食業を続けて成功した70代の知人がいて、相談したところ「サラリーマンをやってきた人なら、生真面目だから大丈夫」とあっさり。難しい経営も誠実さと信用があれば乗り切れる、と覚悟が決まりました。