「迫力ありすぎ…」名作ドラマ『家なき子』天才・安達祐実と過激な悪役たちの「圧巻演技」
■ここまでする…!? すずを陥れる悪役が凄すぎた
『家なき子』の原案と企画を担当したのは、平成ドラマのヒットメーカー・野島伸司さんだ。彼が手がけるドラマの多くには必ずと言って良いほど「ひどい悪役」が登場するが、本作も例外ではなかった。 まずはすずをトイレに閉じ込めるなど、彼女をいじめるクラスメイトたち。そしてその担任・保阪尚希さん演じる教師・片島智之は、当初はすずの良き理解者であったが、後半は金の魔力に魅入られていく。 そして、すずをことあるごとにいじめ抜く意地悪な叔母・園田京子を演じたのは小柳ルミ子さん。その娘の真弓も一緒になってすずに犬の真似を強要させるなど、激しいいじめを繰り返す。当時、本作を視聴していた筆者だが、彼女たちのいじめは見ているだけで本当にストレスを感じてしまうほどひどいものであった。 そして酒と暴力に明け暮れる、内藤さん演じるすずの父・相沢もインパクト大。内藤さんは今でこそエリート刑事役のイメージがあるが、罵声と暴力ですずを追い詰めるシーンはとにかく恐ろしいのひと言。唯一の味方であるすずの母親・陽子は穏やかで優しいものの、今考えるとどうしてこんなダメ夫とずっと一緒にいたのか少々不思議である。 印象的だったのが、物語中盤に登場した菅井きんさん演じる老婆の女スリ・田畑光江だ。すずと光江は敵対しつつも、光江は最後にすずの罪をも背負って捕まってしまう。 このシーンは『家なき子』屈指の感動シーンとして知られているが、すずが「ババアー!」と絶叫したシーンは迫力がありすぎて、翌日学校ではその話題で持ちきりだった記憶がある。
■社会現象にもなった安達さんのセリフの数々
『家なき子』がヒットした理由に、安達さんが言った数々の名セリフがあるだろう。 まずは、上述した「同情するならカネをくれ!」だ。このセリフは担任である片島が“人のお金に手を出すのは良くない”と、すずをたしなめたときに「…同情するならおカネちょうだい…」と反論し、次に「同情するならカネをくれ!」と絶叫するシーンで登場した。 まだあどけない安達さんが子ども特有の甲高い声で“金が要る!”と叫ぶセリフは、当時の視聴者に衝撃を与えた。折しもドラマ放送時はバブル崩壊直後。多くの人々が経済の厳しさやお金の価値を痛感していた時代背景も、このセリフの印象をさらに強くした一因であろう。 このほかにも「お母さんの保険金なんて絶対やらない!」や「(あんたなんて)カネゴンだ!」という過激なセリフを叫びまくる安達さん。 いずれのセリフも日常生活ではめったに聞くことのない言葉である。しかしそれらのセリフを真っ直ぐな目でストレートに訴える彼女の姿には、視聴者の心を引きつける力があった。これらの言葉が特別な響きを持つのは、純粋さと幼さが残る少女の安達さんが発したからこそだろう。 平成を代表する天才子役・安達祐実さんが主演を務めた『家なき子』は、その後も続編が制作されている。最高視聴率は両者ともに30%を越えた伝説的ドラマだ。 子役が主役となった話題作はいくつかあるが『家なき子』に並ぶドラマはなかなかないように思う。視聴者に大きな衝撃を与えた本作は、悪役の過激な描写も含め、安達さんの演技力の高さを証明するドラマであった。
でかいペンギン