近すぎず、遠すぎず 長い時間をかけて「看板猫」に 大王わさび農場でひなたぼっこ
2月22日は猫の鳴き声をもじって制定された「猫の日」だ。安曇野市内の農場では、野良猫を保護したり、地域で世話などをする「地域猫活動」をしたりして温かく見守っている。 【写真】猫を保護した会社では、気の向くままに猫がオフィスを巡回
安曇野市穂高の大王わさび農場に野良猫がすみ着き、“看板猫”として人気を集めている。黒と白の毛色をした推定8歳の雄で「クロちゃん」などと名付けられ、一日の大半を正面入り口で過ごす。スタッフや来場者の足元にすり寄る人懐こさで、愛らしい姿を見せている。
「にゃ」。ワサビ畑の土手に寝転びながら、頭をなでる人に向かって気持ちよさそうに鳴く。のんびりと起き上がると、日の当たる場所まで歩いてひなたぼっこ。その間、人が近づいても逃げるそぶりは見せない。長崎県から訪れた女性は「かわいい。癒やされますね」と頬を緩めた。
猫の世話を担当するスタッフの熊井奈都記さん(34)によると、農場では10年以上前から野良猫の姿が見られた。かつては農場として世話をしていなかったが、繁殖のペースが速く、飲食物を販売する施設として衛生の観点から方針を転換。地元の保護団体と相談し、不妊・去勢手術を施した上で、餌をあげて管理することにした。
熊井さんがクロちゃんと名付けた猫が現れたのは7年ほど前。きょうだいとみられる他の猫3匹と一緒に「いつの間にかいた」と言う。当初は「臆病な性格」で触ることもできなかったが、時がたつにつれて人に慣れた。その頃には「クロちゃん」のみになっていた。他のスタッフは「おはぎ」「みーちゃん」などと呼ぶ。
熊井さんは朝と夕方、正面入り口でクロちゃんに餌をあげ、日中は来場者にかわいがられる姿を温かく見守る。クロちゃんは農場の交流サイト(SNS)にも時折登場しており、「猫はどこにいるの?」と受付で聞かれることもあるという。「(クロちゃんが)長い時間をかけて看板的存在になってくれた」と熊井さん。「これからも近すぎず遠すぎずの関係を守り、共存したい」と話している。