香港、抗議活動の女性を「国家安全条例」で逮捕-天安門事件から35年
(ブルームバーグ): 香港の警察は1989年に北京で起きた「天安門事件」から35年となる4日、スローガンを叫んでいた68歳の女性を逮捕した。
警察は同日の声明で、女性が扇動的な意図を持ち罪を犯した疑いがあると発表。天安門事件の犠牲者を追悼するため、以前は毎年6月4日に香港市民数千人が集まっていたビクトリア公園の近くで逮捕された。
香港は今年3月、「国家安全条例」を急ぎ制定。同条例が抗議デモを行っている市民に適用されたのは、今回が初めて。
かつては自由な経済とアジア金融の中心地としての地位を謳歌(おうか)してきた香港だが、当局が許容できる言論と扇動の境界線をどこで引くかを再定義しかねない出来事がこのところ相次いでいる。
香港行政長官、国家安全巡り警告-北京の「天安門事件」から35年
警察は、4日に拘束した女性について、年齢と逮捕場所以外の説明はしていない。地元メディアは、この女性をアレクサンドラ・ウォン(王鳳瑤)さんと特定。警察車両で連行される前に数十人の警官に声をかけられている様子を動画に収めた。
映し出されているのは、「ウォンおばあちゃん(王婆婆)」との愛称で知られる活動家が花束を持ち、天安門事件における当局の責任を問うスローガンを叫ぶ姿だ。中国政府は1989年6月4日、北京の天安門広場周辺に集まった民主化を求める学生らデモ参加者を武力で弾圧、多数の死傷者が出た。
当局によれば、警察は4日、治安を乱したとして周辺でさらに3人を逮捕し、スイス人1人と日本人1人を含む5人を短時間拘束し釈放した。
香港に駐在する外国の外交官はこの日、ソーシャルメディアに投稿したり、香港中心部のビクトリア公園を訪れたりしたが、中国政府はこれを「挑発」と批判。
米国総領事館は建物の窓に電気キャンドルを並べ、英国はX(旧ツイッター)に、6月4日を意味する数字としてよく使われるローマ数字の「VI」と「VI」の下にライトをつけたスマートフォンの写真を投稿した。