<独占取材>なぜ「幽☆遊☆白書」実写化は今だったのか? ハリウッドで難しいレベルの戸愚呂兄弟のVFX【WBS】
コンテンツを利用したビジネスは、2025年には世界で、180兆円を超える市場になると見込まれています。この巨大市場に今、日本のコンテンツが次々攻め込んでいます。世界に広がる日本の知的財産(IP)。その追い風となったのが、動画配信プラットフォームの普及です。 「ネットフリックス」が13日、都内であるイベントを開きました。世界配信が始まった漫画「幽☆遊☆白書」の実写版ドラマを記念した特別先行上映会です。 「幽☆遊☆白書」は1990年代に集英社の週刊少年ジャンプで連載された人気漫画。人間界と霊界、そして魔界を舞台に、主人公・浦飯幽助が仲間と繰り広げる冒険物語です。激しいバトルシーンは実写化不可能と言われていました。制作には実に5年もかけました。 ネットフリックスがここまで力を入れる狙いはどこにあるのでしょうか。テレビカメラが初めて入る日本オフィスで独占取材しました。 オフィスには世界的ヒットとなった韓国「イカゲーム」の巨大な人形に、アニメ作品がヒット中の浦沢直樹さん原作の「PLUTO」のイラストなど世界的コンテンツが並んでいました。 そんなネットフリックスが、およそ30年前に連載が終わった「幽☆遊☆白書」の実写版を配信開始。その理由について、ネットフリックスで日本市場のコンテンツを統括する坂本和隆さんに聞きました。 「当時は実写化に踏み切る発想がなかった。映像業界の技術が追いつかなかった。逆に今の時代だからこそできる表現があるので実写化してみたいと思った」(坂本さん) 技術の進化が、日本のIPコンテンツの実写化が増えた最大の要因です。「幽☆遊☆白書」の見どころである戦闘シーン。連載当時は、技術的に実写化が難しかった場面ですが、ネットフリックスが傘下に加えたアメリカの特撮スタジオの最新VFX(デジタル映像技術)なら可能です。 指揮を執ったのは、VFX技術などでアカデミー賞も受賞した坂口亮さん。 「グローバルにVFXをやる理由が戸愚呂兄弟の表現が難しいから。難易度が一番高い。日本で難しいのではなく、ハリウッドで難しいくらいの作品」(坂口さん) 体を変化させて戦う重要な敵、戸愚呂兄弟。これを再現するために役者の顔だけの演技データを撮影し、それをCGなどで作った体に合成することで、戦闘シーンが再現できました。実は8月に配信を始め、世界84の国と地域で1位となった漫画「ワンピース」の実写版もこうした最新技術を総動員して作ったものでした。 日本のコンテンツを実写化が可能になったことに、「イカゲーム」「愛の不時着」を制作し、ネットフリックスのアジア全体のコンテンツを統括するキム・ミニョンさんは「ネットフリックスにとって日本のIPはとても重要。世界中が多くの想像力と素晴らしいIPの基盤である日本に注目している」と話します。 こうしたコンテンツの企画をネットフリックスはどうやって決めているのでしょうか。 「地上波のドラマでは不倫というテーマでよく作られている。そこをどう差別化していくか」(日活出身の「ネットフリックス」高橋信一さん) 定例の企画会議には、ほかにもテレビ局や映画会社の元プロデューサーなど、実力派のクリエイターたちがズラリ。肝は、こうしたクリエイターの企画力です。 「この作品を自分で作るという強い決意と結果で出すということに、会社は全力でサポートしてくれる。そこは大きな違い」(高橋さん) 「プロデューサーそれぞれが上長に企画を通すという考え自体がない。議論を重ねていくことで企画の強度を重ねていく」(日本のコンテンツを統括する坂本さん) クリエイターの企画を信頼し、会社側は技術面や資金面などで支援し、それをどう実現するかに注力しています。 技術が発展し、人材も豊富な体制を構築した今、ネットフリックスは過去作品から最新作まで可能性を秘めた日本のIPにより一層目を光らせているのです。 「まだ届けていないものがどこにあるのか。語られてないものに何があるのか。新しい出会いと経験、わくわくを届けていきたい。そこにベストなIPはどんなものか、常に探していきたい」(坂本さん) ※ワールドビジネスサテライト