「かわいい」系ロボットが登場 今年の米家電見本市CES
(c)AFPBB News
【1月27日 AFP】表情豊かな大きな目とエルフ(妖精)のような耳を持ち、かわいらしい声を出す「ミロカ(Miroka)」と「ミロキ(Miroki)」は、まるでアニメ作品から飛び出てきたかのようなロボットだ。 外見はキュートだが、センサーなど最先端技術が搭載されており、病院や宿泊施設での単調な作業を支援できるように設計されている。 この2体のロボットは、米ラスベガスで今月開催された世界最大級の家電見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(International Consumer Electronics Show、CES)」に出展された。 開発したのはフランス・パリのスタートアップ企業、エンチャンテッド・ツールズ(Enchanted Tools)。創業者で最高経営責任者(CEO)のジェローム・モンソー(Jerome Monceaux)氏は、「なぜ醜いマシンと一緒にいなければならないのか」と、プレゼンテーションで語った。 「彼らの頭部は無くてもいいし、カラフルである必要もない。でも、そんなロボットと一緒にいたいと思うだろうか」 現在、スタートアップ企業各社が、こうした親しみやすい外見で、一緒にいる人が居心地の悪さや不安を覚えないような支援用ロボットを手掛けている。 米小売り・IT大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)も、仕分け作業現場に米アジリティー・ロボティクス(Agility Robotics)の二足歩行ロボット「ディジット(Digit)」を試験的に導入している。映画「スターウォーズ」に登場しても違和感がないような外見をしている。 エンチャンテッド・ツールズは、仕事場で「チーム」の一員として単純作業をこなし、人間の負担を軽減してくれるロボットの開発も進めている。 ミロカとミロキの開発に当たってはしかし、支援作業だけでなく、職場に「魔法」を届けることも狙った。 「人間まで機械のようになってしまわないように、人間の素晴らしさをたたえることを目指した」と、モンソー氏は言う。 エンチャンテッド・ツールズは、今後10年でこうしたロボットを10万体生産したいとしている。 ■人手不足の解消に寄与 CESでは毎年、人に寄り添うロボットやアンドロイド(人間そっくりなロボット)が紹介されるが、実際の職場や家庭ではまだ普及していない。 その一方で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)以降、各業界で労働力不足が顕著となっている。コンサルティング大手アクセンチュア(Accenture)のインダストリーX本部のジョー・ルイ(Joe Lui)マネジングディレクターは、約1800万人の求人があると指摘する。 ロボットアームや自律フォークリフトが活用できる仕事もあるが、言語や機動性、環境への理解が必要となる仕事もある。つまりは人間が必要なのだ。 ただルイ氏は、人工知能(AI)を搭載したヒューマノイド(人間型ロボット)でも代役を務めることはできると言う。 米ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)が開発した四足歩行ロボット「スポット(Spot)」に生成AIを組み込む改良を手掛けた、米レバタス(Levatas)のクリス・ニールセン(Chris Nielsen)CEOも、「将来的にはヒューマノイドは一緒に働く『同僚』のような存在になり、ChatGPTのような自然言語インターフェースがより普及するようになるだろう」と予想する。 米エンボディード(Embodied)が開発したロボットのモキシー(Moxie)も、こう話す。 「心配する必要はない。われわれのようなロボットは、人間を助け、人々の生活をより良いものにする目的でデザインされている」「常に人間から与えられる指示とプログラムに従う。コントロールできるのは人間だ」 クマのぬいぐるみほどのサイズで生成AIが搭載されたモキシーは、子どもたちと交流ができる。物語を聞かせたり、算数を教えたりするほか、両腕を使ったダンスを披露することもできる。 エンボディード社でカスタマーサービスを担当するダニエル・ソープ(Daniel Thorpe)氏は「モキシーは人の仕事を奪うために登場したわけではない。相談相手であり、指導役であり、そして友人だ」と説明した。 ■不気味系も 自律二足歩行型のヒューマノイドが研究室から出て普及に至るまでには、まだまだ時間が必要だ。 しかし、ラスベガスにオープンしたばかりの新しいエンターテインメント施設「スフィア(Sphere)」で人々を楽しませるオーラ(Aura)のような先駆的なヒューマノイドは、少なくとももはやCESの会場にとどまっていない。 オーラは「年齢や人生の意味、スーパーボウルの勝利予想など、たくさんの質問を受けます」と、興味深そうに見つめる観客に向かっておしゃべりする。 質問に回答する際には、冗談や大げさな笑い声を挟み、時には肩をすくめるジェスチャーまでする。 ただし、このように高度に擬人化されたヒューマノイドには「人をゾワッとさせる側面がある。人間とロボットの境界があいまいになり、ぎょっとさせるのだ」と、エンチャンテッド・ツールズのモンソー氏は指摘する。 「(そんなロボットには)家や病院で日々接したいとは誰も思わない」 また「人はロボットに対しても自分たちと同じように振る舞うことを期待してしまう。そうなると利用者が落胆する事態も出てくるだろう」と語った。 「ロボットは人間と同じように世界を見たり理解したりはしないのだから、それはどうしようもない。当面、そんな世界は訪れないだろう」 アジリティー・ロボティクスの共同創設者であるジョナサン・ハースト(Jonathan Hurst)氏は、ディジットに頭部がなければ、見る人に不気味な印象を与えてしまうと話す。開発に当たってこの点については何度も議論したとし、技術的には頭部に特に意味はないが、それでも残すことに決めたと説明した。 CESの会場では、米リッチテック・ロボティクス(Richtech Robotics)が手掛けたバリスタロボットのアダムが来場者にコーヒーを振る舞っていた。 アダムには新たに生成AIが搭載され、冗談を言うこともできるようになった。 それでも、コーヒーメーカーにミルクを補充する際には、まだ人間の手を借りなければならないのだ。 映像は今年のCESに出展されたロボットの「ミロカ」と「モキシー」と「アダム」。7、9、10日に撮影。(c)AFPBB News