約6000万円で落札された時の心境は!? AIとの共創により誕生したオンリーワンのG-SHOCK【G-D001】の開発裏話を中心メンバーに聞いた
取材後記
ドリームプロジェクトの第1弾となるG-D5000は、2015年のバーゼルワールドの会場でプロトタイプを初めて見せていただいた記憶がある。あのモデルはその後に世界限定35本で製品化されたほか、同様の技術を活用してフルメタルスクエアG-SHOCK「GMW-B5000」誕生のベースも築いた。一方の第2弾となるG-D001はすべてが新しい技術で作られており、まさに次の時代を見据えた試金石としての一本である。 筆者は2015年にG-D5000の試作機を見せてもらった際、伊部さんが「地球上にある最高の金属でG-SHOCKを作りたい」という純粋な動機からオリジンのフルゴールド化に着手した、と聞いた。このようにいわば誕生から30年以上にわたって研鑽を積み重ねてきた技術の集大成というべき取り組みだった第1弾に対し、若手に託された第2弾の目標は誰も見たことのないG-SHOCKを作り上げること。たとえばガリウム製のソーラーセル。これは一般に搭載するには高額だというが、もしかしたら今後のMR-Gに使われる可能性は否定できない。外光を使った針位置の自動修正機能も、きっと技術的には応用できる時計がこれから出てくる可能性があるだろう。耐衝撃性能という制約がなければ、オシアナスやエディフィスなど、そのほかのブランドに使うことも考えられる。 約6000万円で落札された夢のようなG-SHOCK。収益金は北米の環境団体The Nature Conservancyに寄付されるため、ドリームプロジェクトを通じてカシオ側に売上があるわけではない。だが、このモデルで得た飛躍的な技術進化と世界に向けた宣伝効果は、2年に及ぶ研究開発の時間とコストや、落札額と比べても遥かにそれを上回る価値があったのではないかと筆者は考えている。 1983年、「落としても壊れない丈夫な時計」という実現不可能に思えたタフネス性能を実現したオリジンから40年を経て、もはや完全に金属のみでG-SHOCKの耐衝撃性能を確立する術を得た。ここから果たしてG-SHOCKはどのような進化を遂げていくのか。50周年を迎えたときのG-SHOCKが世界でどのような存在になっているのか、いまから楽しみで仕方がない。
水藤大輔(WATCHNAVI)