日本のispaceが月着陸機の打ち上げに成功 4〜5カ月後の月面着陸に再び挑む
日本時間の1月15日午後3時11分、月着陸機「レジリエンス」がケネディ宇宙センター(米フロリダ州)から打ち上げられ、予定軌道に無事投入された。 【画像】4~5カ月かけて月着陸機「レジリエンス」は月に向かう この機体を打ち上げたのは日本の宇宙ベンチャー企業ispace(アイスペース、本社:東京都中央区)。同社が2023年4月に試みた同型機による月面着陸では、着陸直前にトラブルが発生して失敗に終わったが、今回は2度目の挑戦となる。 この打ち上げでは、1機のファルコン9ロケットによって2機の月着陸機が同時に打ち上げられた。レジリエンスとともに搭載されたのは、米国の民間宇宙企業ファイアフライの月着陸機「ブルーゴースト」。2機を搭載した第2段ロケットが予定軌道に入ると、打ち上げから1時間5分後にブルーゴーストがリリースされ、続いてその27分後にレジリエンスが分離された。 2機は月へ向かう軌道が異なるため、月までの所要時間が大きく異なる。NASAの商業月面輸送サービス(CLPS)の一環として打ち上げられたブルーゴーストは、打ち上げから45日後に月に到達。一方、ispace独自の民間事業として打ち上げられたレジリエンスは、すべてが順調に進めば5月から6月にかけて月面に着陸する。 ■「寒さの海」の砂をNASAに販売 レジリエンスは「寒さの海」への着陸を目指す。月の北緯56度に位置するこのエリアは、地球から見ると月の北極近くに見え、ウサギのシルエットでいえばその背中側に当たる。ここにはクレーターが少なく、広大な平地が広がるため、着陸に適したエリアといえる。
成功すれば、レジリエンスは「アジア初」の民間月着陸機として記録される
レジリエンスは八角柱型の無人探査機であり、そのサイズはタテ約2.3m、最大直径2.5m。内部には月面用水電解装置(高砂熱学)、藻類培養実験モジュール(ユーグレナ)など、民間企業や政府機関などから委託された5種類のペイロード(積載物)のほか、ispaceが自社開発した小型月面探査車「テネシアス」も搭載されている。 「粘り強さ」という意味を持つテネシアスは、全長54cm、質量5kgのマイクロローバーであり、自走しながらHDカメラで月面を撮影し、その画像をルクセンブルクのispace欧州支社に転送する。また、テネシアスは車体前部に搭載されたスコップでレゴリス(月の砂)を採取するが、その所有権はNASA(米航空宇宙局)に売却される。ただし、それを地球へ持ち帰る予定は現時点ではない。 ■「史上初」だらけのミッション ispaceが2023年の1回ミッションに成功していれば、そのランダーは日本初の月着陸機、さらに世界初の民間月着陸機になるはずだった。しかし、その着陸に失敗したことにより、「日本初の月面着陸機」の名誉はJAXAの「SLIM」(2024年1月20日着陸)に、「世界初の民間月面着陸機」の称号は、米インテュイティブ・マシーンズの「ノバC」(同年2月22日着陸)に譲ることになった。ただし、今回のミッションに成功すればレジリエンスは「日本初」、強いては「アジア初」の民間月着陸機として記録される。 今回のミッションでは「史上初」の試みが多い。1機のロケットによって2社の月面探査機が打ち上げられたのは今回が初めてであり、「寒さの海」に着陸するのもレジリエンスが史上初。レゴリスのNASAへの販売は、月資源における世界初の国際商取引になる。