“BLドラマブーム”牽引する加藤綾佳監督のこだわりとは?「BL作品だからこうしようと意識しすぎない」<彼のいる生活>
佐藤瑠雅と坂井翔のW主演ドラマ「彼のいる生活」(毎週木曜深夜1:05-1:35、TOKYO MX/ABEMAにてリアルタイム放送/TVer見逃し配信あり、Hulu・Leminoほかで順次配信)が現在放送中。本ドラマは青春BLの名手・宮田トヲルによる同名人気コミックを実写ドラマ化した青春ラブコメディー。大学デビューを夢見る平凡男子・夏川涼太(坂井)がモテ男子の幼なじみ・田中一仁(佐藤)とルームシェアするうちに、一仁の好きな人が自分だと知って少しずつ気持ちが変化していく様子を描き、じれったくも胸キュン満載でBLドラマファンに注目されている。演出は「体感予報」や「オールドファッションカップケーキ」を手掛け、“BLドラマブーム”を牽引するキーパーソンのひとり、加藤綾佳監督が担当。5月30日(木)の最終話放送を前に、WEBザテレビジョンでは加藤監督にインタビューを実施し、作品への思いやBLドラマブームについて語ってもらった。 【写真】作中屈指のドキドキ場面…!ベッドで坂井翔“夏川”に抱きしめられる佐藤瑠雅“一仁” ■「原作の爽やかさと等身大の男の子たちの空気を大事にしたい」 ――まず最初に、本ドラマの監督オファーが来たときの第一印象を教えてください。 原作を読ませていただいて、とても爽やかで可愛らしい作品だなって思ったんです。その感じを踏襲できたらいいなと思いました。原作に対して常にリスペクトを持って関わらせて頂こうと思っているので、映像でもできる限り世界観を再現できるようにと心がけています。 ――本作を監督するうえで、爽やかさと可愛らしさを念頭に置かれたのでしょうか? はい。単行本1冊に対して8話のドラマシリーズということで、ドラマならではのオリジナルストーリーも増やす必要があったんですけど、原作の爽やかさと等身大の男の子たちの空気を大事にしたいと脚本家の方にお伝えしました。 ――具体的に“男の子たちの空気”というのはどういうところですか? カップ麺のシーンが4話で登場するのですけど、原作でもカップ麺を食べるシーンがあって、すごく大学生の男の子っぽくていいなって思ったので脚本に入れてもらいました。また、5話のデートのシーンもキャンプだと彼らの良さが出るんじゃないかと提案したりしましたね。 ■「2人がキャラクターになじみきっていると感じたので、安心して任せました」 ――キャストの佐藤さんも坂井さんも等身大の男の子っぽさが出ていて原作のイメージにも合っていると思いましたが、印象はいかがでしょうか? 坂井さんは夏川の無邪気で明るくて裏表がない感じが出ていると思います。坂井さん自身ちょっと天然なところもあるんですけど、とても優しい人だなというのが感じられて、そこも夏川らしいと思いました。佐藤さんも真面目な人で、お芝居に対して常に真摯に演じるという気構えで現場に臨んでくれつつ、明るく周りを笑わせてくれていました。お2人ともまっすぐさも含めて、ビジュアルだけではなく、一仁と夏川らしさがあって良かったです。 ――裏表がないまっすぐさがとても自然に感じられました。 どれぐらいまっすぐで、なおかつナチュラルに、というのは、最初にチューニングというか、クランクインの段階でお2人と話して固めて、そこから先は彼らが掴んだキャラクターにプラスアルファで演出するぐらいでした。 ――動きなどを細かく指示するタイプの監督もいらっしゃいますが、加藤監督はある意味で演者に任せるタイプですか? 撮影中盤ぐらいからは完全にもう2人がキャラクターになじみきっていると感じられたので、安心して任せていました。 ――演出についてなど、Xのスペースでもお話しされていましたが、Xを通じて視聴者と交流していかがでしたか? たくさん質問をいただけてありがたかったですし、質問にお答えしながら自分が意図していたことを再認識することができました。何気なくその場で演出したと思ったことでも、自分の中にこういう解釈があったんだなと改めて考えることができて面白かったです。 ――BLドラマファンはキャストはもちろん、監督やスタッフにも注目している方が多いと思うのですが、監督も感じられますか? 感じる部分はありますね。このドラマの監督として自分の名前が発表された時に、「加藤監督だから安心して見られます」というような言葉をいただいて、とてもありがたくてほっとしました。監督の名前もチェックしていただいているんだと思って、うれしかったですね。 ■「逆にBL作品だからこうしようということを意識しすぎないように」 ――毎クール数本放送されるほどBLドラマブームが来てると言えますが、BL作品を演出するうえで注意されてることはありますか? 私自身がもともとBLに知識がなかった人間だったこともあって、逆にBL作品だからこうしようということを意識しすぎないようにしてます。今回は特に、恋愛ドラマでありつつ、家族や友人も含めたヒューマンドラマでもあるので、何というか、BL感をあえて狙うと違うドラマになってしまうと考えていました。 ――“BL作品”とひとくくりに捉えるのではなく、作品ごとにその作品が持つテーマに向き合う感じでしょうか? そうですね。作品ごとにそれぞれ大事にすべきポイントとは何かを考えていて、BL作品だからとは考えたことはないですね。「オールドファッションカップケーキ」はアラフォーの男性の生き方や生活感を大切にしようと思いましたし、「体感予報」は原作にもあった刺激的な表現ときちんと向き合うべきだと思いました。 ――なるほど、「オールド~」は3次元では無理じゃないかと思ったアラフォー男性のかわいらしさにときめきましたし、「体感予報」はエロティックシーンにもピュアな胸キュンを感じることができました。監督の真摯な姿勢のたまものですね。 ありがとうございます。でも、私はキャストの力そのものが1番大きいと思っています。演じる方が生理的にしっくりこないということは避けたいと常に思っていて、キャストの方に「しっくりこなかったら言ってね」と伝えたり、撮影の合間などにキャストの方と何気なく話したりしてコミュニケーションを取ることでキャスト側も言いたいことを言いやすい環境にしようと心がけています。 ――生理的なレベルのリアリティを追求されているんですね。他にもこだわりがあれば教えてください。 視聴者の方も気づいてくださっている部分だと思いますが、色味なども気にしています。「体感予報」のときは湿度を感じるようなトーンで、一方今回の作品では光をやわらかく見せて、初夏のような爽やかな雰囲気を出したりしています。湿度や爽やかさなど画面から目に見えないものも伝わればいいなと思っています。 ――最後に「彼のいる生活」の視聴者に向けて、メッセージや最終回の注目ポイントをお願いします。 最終回で夏川と一仁がこんなことをしたら素敵なんじゃないかと脚本家とたくさん話し合いながら形にしたシーンがあるので、注目してもらえるとうれしいです。2人の恋の行方をぜひ見守ってあげてください。 ◆取材・文=牧島史佳