元本保証でおトク? トヨタの新型「種類株」に落とし穴はないのか
トヨタ自動車は16日、株主総会を開催し、新型種類株「AA型種類株式」の発行を決定しました。これは実質的に元本保証の商品なのですが、これは個人投資家にとって有利な投資対象なのでしょうか。またリスクはあるのでしょうか。
株と債券のいいとこ取りをした商品
種類株とは、普通株と異なる権利を有する株式のことを指します。今回発行されるAA型種類株式は、非上場で、5年間は譲渡や換金ができないという制限がありますが、5年を過ぎた時点で、普通株に転換するか、トヨタに発行価格での買い取りを請求するのか、あるいはそのまま保有するのか選択することができます。 配当も支払われますが、初年度は0.5%と低く抑えられており、翌年度以降5年目まで0.5%ずつ 段階的に増加していく仕組みです。もし5年後にトヨタ株が値上がりしていれば、値上がり益を享受できますし、値下がりしていた場合でも、トヨタが買い取ってくれます。5年後にトヨタが経営危機となっている可能性はゼロに近いので、実質的に元本保証された商品と考えてよいでしょう。まさに、株と債券のいいとこ取りをした商品ということになります。 値上がり益を享受できるといっても、発行価格は普通株の価格よりも高く設定される予定ですから、普通株ほどのキャピタルゲインを得ることはできません。また5年後以降の金利についても、市場動向次第では有利になるか不利になるかは分かりません。
最大のリスクは流動性
最大のリスクはやはり流動性でしょう。5年間は換金ができないというのは、機関投資家にとっては致命的ですので、投資対象にはならないと考えられます。トヨタ自身も個人投資家向けと説明していますので、資金的に余裕があり、5年間、出資金が自由にならなくてもよいという個人が主な対象者ということになります。 トヨタがわざわざこのような株式を発行する理由は、グループ企業の持ち合いを解消し、外部の安定株主を確保しなければならないという事情があるからです。そのためには、多少会社に不利であっても、投資家に有利な商品を出すという判断だと思われます。 こうした都合のよい株主だけを集めようとする姿勢には疑問の声も出ており、株主総会では25%の株主が反対票を投じたといわれています。もし本当にトヨタの将来性を高く評価している投資家であれば、堂々と普通株を買って、その値上がり益を100%享受すればよいわけですから、このAA型種類株を買う投資家は、どこかでトヨタの将来性に疑問を持っている可能性もあるわけです。 ただ、低リスクで、相対的に有利な商品であることは間違いありませんから、トヨタに対する評価とは別に、購入を検討してみるのもよいかもしれません。