SNS詐欺広告、被害急増に緊急対応 実効性担保へ法規制導入の必要性も
政府が18日に交流サイト(SNS)を通じた詐欺広告への総合対策を決定したのは、詐欺被害の急増に伴う緊急対応が求められたためだ。詐欺広告対策は総務省の有識者会議でも議論が続けられているが、その結論を待たずにSNSを運営するプラットフォーム(PF)事業者に対応を要求した形となる。一方、既に法規制を導入する諸外国とは異なり今回の要求に強制力はなく、実効性担保へ向けた法規制導入の必要性も指摘されている。 【図で見る】SNSを悪用した投資詐欺の主な手口 SNSへの不適切な投稿の増加に伴い、政府はこれまでも対策を強化してきた。今国会では、誹謗中傷などの投稿を削除する申し出に対し、PF事業者が迅速に対応することを義務付ける改正プロパイダー責任制限法が成立した。 一方、人工知能(AI)の普及なども伴い、著名人らに成り済まして投資に誘う詐欺広告が急増。世界で多くの人が利用するSNSは悪用手段が次々に編み出されており、政府の対応は後手に回らざるを得なくなっている。自民党はこうした状況を踏まえ、今月上旬に政府に対し、緊急対応を提言。総合対策はこの提言が下地となった。 ただ、今回の対策に強制力はない。フェイスブックを運営する米メタは4月、詐欺広告の増加を受けて「世界中の膨大な数の広告を審査することには課題も伴う」「社会全体でのアプローチが重要だ」などとする声明を発表した。PF事業者が政府の要求に対応するかは不透明な状況だ。 詐欺広告をめぐっては、欧州連合(EU)がデジタルサービス法(DSA)、英国がオンライン安全法でそれぞれPF事業者に迅速な対応を義務付けており、日本でも総務省の有識者会議が法規制の導入を視野に検討を進める。会議に出席する有識者からは実効性の担保が重要課題として指摘されており、今夏をめどに取りまとめる対策には一定の強制力を持った措置を組み込みたい考えだ。(根本和哉)