夫婦で「28万円」の年金をもらっています。夫が亡くなっても遺族年金と合わせて「23万円」くらいはもらえますよね?
「遺族年金は配偶者の年金の4分の3もらえる」という話を耳にしたことがある人もいるかもしれません。 元会社員の配偶者の年金が約22万円、専業主婦(夫)の自分の老齢基礎年金が約6万5000円で、夫婦で合計28万円超受け取っているとします。老後に配偶者が亡くなりその年金が受け取れなくなっても、配偶者の遺族年金が受け取れるようになるから、なんとか生活していけると考えていませんか? 具体的には、「配偶者の年金22万円の4分の3の16万5000円が受給できれば、自分の年金と合わせて23万円はもらえるだろう」と漠然と考えている人は、実際の遺族年金が想定よりも少なくて、配偶者の死後、焦ることになるかもしれません。 本記事では、老後に元会社員の夫が亡くなった後、妻が受け取れる遺族年金の算出方法を解説するとともに、具体的なケースでシミュレーションします。
遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれている
「年金は2階建て」と聞いたことがある人もいるでしょうが、遺族年金も同じく2階建てとなっています。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。 遺族基礎年金と遺族厚生年金は受給要件が全く異なり、それぞれ次のようになっています。 ●遺族基礎年金…子のある配偶者(もしくは子ども本人)が、子が18歳になった年度の3月31日まで受給できる ●遺族厚生年金…老齢厚生年金の受給者が死亡したとき、配偶者、子、父母などが受給できる 遺族基礎年金は「子が18歳まで」という条件があるため、65歳以降の妻では、ほとんどのケースで遺族厚生年金のみが受給対象となるでしょう。
遺族厚生年金の計算方法
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった配偶者の厚生年金の加入期間や報酬の額をもとに計算されます。計算式は図表1の通りで、2003年3月までとそれ以降では計算方法が異なります。 図表1
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和5年度版より筆者作成 ■夫が70歳で死亡、20歳から40年間厚生年金を納め続けたケース 計算式に当てはめ、具体的にシミュレーションしてみます。元会社員の夫、専業主婦の妻の夫婦とし、夫が70歳で死亡したケースで考えます。 ●夫は1973年から40年間会社員として勤務 ●2003年3月までの平均標準報酬月額は40万円、2003年4月以降の平均標準報酬月額は60万円 夫の遺族厚生年金を計算します。 A:40万円×7.125/1000×360ヶ月=102万6000円 B:60万円×5.481/1000×120ヶ月=39万4632円 遺族厚生年金:(102万6000円+39万4632円)×3/4=106万5474円 このように計算できるため、1ヶ月に換算すると約8万8800円の受給になります。妻本人の毎月の老齢基礎年金額約6万5000円(年間78万900円より算出)と合わせると、1ヶ月に受給できる年金は約15万3800円となります。 ■妻も厚生年金を受け取っている場合は? 妻自身も会社員として働いていた期間があり、厚生年金を受け取っているケースもあり得ます。このパターンでもシミュレーションしてみましょう。この場合は、次の2つの額を比較して、より高いほうが遺族厚生年金の額となります。 1.亡くなった夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額 (先に解説した計算方法で求めた額) 2.「1の額の2/3」と「妻の老齢厚生年金の額の1/2」を合計した額 例えば夫の年金が前述のケースで、妻の厚生老齢年金が年間80万円だった場合は次のようになります。 1.亡くなった夫の老齢厚生年金の報酬事例部分の3/4=106万5474円 2.「1の額の2/3」は、71万316円 「妻の老齢厚生年金の額の1/2」は、40万円 合計すると、71万316円+40万円=111万316円 このケースでは、妻は、より額の高い2の111万316円を遺族厚生年金として受け取れます。月にすると9万2000円で、妻本人の老齢基礎年金額約6万5000円と合わせると、毎月15万7000円受給できます。