高尾山古墳(沼津)史跡指定 臨済寺庭園(静岡)名勝追加指定 文化審議会答申
文化審議会は24日、後期旧石器時代から縄文時代草創期の石器や炉の跡が見つかった福井洞窟(長崎県佐世保市)を特別史跡にするよう、文部科学相に答申した。旧石器時代の遺跡が特別史跡となるのは初めて。他に、東日本最古級の大規模前方後方墳、高尾山古墳(沼津市)など10件の史跡指定、臨済寺庭園(静岡市葵区)に周辺建物を加えるなど、37件の史跡・名勝・天然記念物の追加指定を求めた。 福井洞窟は奥行き5・5メートルで、1万9千~1万年前の15層の地層があり、年代ごとに特徴の異なる石器が出土した。洞窟が石器製作の拠点だったことを示唆する炉跡も発見。旧石器時代の「細石刃(さいせきじん)」と縄文土器の両方が同じ地層から見つかるなど、旧石器から縄文時代への変遷を明らかにする上で貴重と評価された。 新指定の史跡10件のうち、黒山の昔穴遺跡(岩手県九戸村)や上野(こうずけ)国分尼寺跡(群馬県高崎市)など6件は、史跡に指定する前段階から保護するため文化庁が2023年に「指定相当の埋蔵文化財」に選んでいた。 大正時代の「西氏庭園」(金沢市)など2件の名勝指定も答申した。また、1970年大阪万博の「日本万国博覧会記念公園日本庭園」(大阪府吹田市)など3件を登録記念物に、「大谷(おおや)の奇岩群と採石産業の文化的景観」(宇都宮市)を重要文化的景観に選定することを求めた。 いずれも答申通り告示され、史跡・名勝・天然記念物計3376件(うち特別史跡64件)、登録記念物135件、重要文化的景観73件となる。静岡県文化財課によると、県内の史跡は48件(うち特別史跡が3件)、名勝が10件(うち特別名勝が1件)。
高尾山古墳(沼津市)東日本最古級の前方後方墳
高尾山古墳は、3世紀中頃に築造された東日本最古級、最大級の前方後方墳。近畿の古墳文化が東日本へと広がった過程を示している。道路建設に伴う発掘調査で年代や全長62メートルの規模が判明。男性が埋葬されたと考えられ、青銅鏡や鉄やりなどの副葬品が発見された。東海西部や関東由来の土器も出土し、広範囲の交流もうかがわせる。道路は古墳をトンネルや橋で回避して整備する。
臨済寺庭園(静岡市葵区) 庭を観賞できる周辺建物も
臨済寺庭園(静岡市葵区)は、1582(天正10)年の織田・徳川両軍らによる甲州征伐の兵火で焼失した寺院を徳川家康が再建した際、整備されたと伝わる。 本堂北側の賤機山傾斜地に設けられた庭園は1936(昭和11)年に国の名勝となっていて、今回は庭を観賞できる本堂、書院、茶室、回廊が追加される。 臨済寺は普段は非公開。毎年5月19日と10月15日に一般公開される。